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２０２９年。

空港を飛び立ったアメリカ行きの飛行機が、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　墜落事故を起こした。



乗客乗員、合わせて５８９人のうち、５８７人が死亡。
過去最悪の死亡者数だったと言われている。







生き残った姉弟。







姉は、重傷を負ったモノの、奇跡的に歩くことが出来た。
まだ歳の離れた弟を抱きかかえ、両親の変わり果てた姿を見ても泣くことはなく。
必死に救急隊員を捜し、呼んだという。
弟は、姉の腕に抱えられ、重傷である怪我の痛みで泣き叫ぶことはなく。
ただただ、黙って、大人しくしていたという。



姉、１３歳。
弟、５歳。



歳の離れた姉弟は、両親と死別し、生き残った。
２人を待っていたのは。



祖母。



優しく微笑み、
暖かい言葉を掛け、
包み込むように抱きしめる“世界一の技術者”。

姉弟は愛された。
正しい愛、真っ直ぐな愛。
それは次第に、歪む。





そんな愛に愛されていたが故に———————————————、弟は、歪ませられる。





祖母は弟の中に、彼を捜し始める。
愛して病まなかった彼を。

そして祖母は気がつく。



「見つからないのならば造れば良い」、と。



次第に、祖母は狂っていく。









２０３Ｘ年。

今より少しだけ科学技術の進んだ国。

１人の女技術者は思い立つ。

そして、彼女は決してやってはならないことをしてしまった。

それは結果的に、たくさんのモノを失い、


たくさんのモノを救うこととなる。