コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ 祝! 参照400突破! ( No.175 )
- 日時: 2010/12/16 16:33
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
7章 51話「心の底から…」
「楓〜…お待たせ…」
空は思いっきり走った後、息を切らしながら楓のもとへ駆け寄った。
今日は、ここで運動会の練習終わり。これから天文学部の皆でプラネタリウムに寄るところだ。
楓も待ち合わせ場所に今来たところらしい。男子は残って道具を片づけているんだとか。
「もう少ししたら来るはずだよ。」と楓が言った言葉が合図になったかのように、男子3人がこっちへ向かってくるのが見えた。
「よっしゃ、行くとするか。」
皆が集まったのを確認し、柊先輩は言う。そのあと、親友の望月先輩の顔を覗き込んだ。
望月先輩はこんなところでも本を読むつもりだ。本を片手に持ち、柊先輩の方を見てこくりと頷く。
望月先輩が頷いたのを見て柊先輩は歩き始めた。その後ろを空は黙ってついて行く。
「これから行くプラネタリウム、行ったことある?」
柊先輩が少し後ろを振り向いて、空達に問いかけた。
その問いに空は黙って頷く。これから行くプラネタリウムは、小さいころしょっちゅう寄っていた。お父さんと一緒に……。
でもお父さんが死んでからは行かなくなった。母は一人で家を支えようと必死だったし、行ったらお父さんのことを思い出して悲しくなると思ったからだ。
でも実際、空は心の中でプラネタリウムという思い出の場所に行きたかったんだと思う。なぜなら、こんなにウキウキして、今、羽があったら舞い上がってるところだから。そのくらい嬉しい……—————
「おっ、天野は行ったことあるんだ。そこ面白くね? ロボットとかもあるし、たまに児童を集めて映画鑑賞してるよな。小さい頃、よく見たんだ。」
柊先輩が楽しそうに話す横で、望月先輩はポロっと呟いた。
「思い出話はいいけど、この通りで曲がるんじゃないのか?」
その言葉を聞いて柊先輩はハッとする。
「やっべ、もう少しで、道間違えちまうところだった……。」と言い、90°体の向きを変える。それに沿って空達も右へと方向転換をした。
「私は“101匹わんちゃん”、そこで見たことあります。」
空はさっきの話題に答えた。
先輩と話すのは楽しい。先輩たちの行動を見ているのも楽しい。そしてそれを見ながら微笑み、冗談めかすことも楽しいのだ。
「おお! あれだよな、犬が増えていくやつ!」
「正確には何十匹の犬を一気に貰うんだが。」
柊先輩の言葉に、望月先輩は本から顔をあげ指摘する。確かに“増えていく”と“一気に増える”は違うな……。
空は苦笑した。そこに光聖君が入って、
「101匹も犬がいたら、食費が大変だよな。」
と真面目な顔で付け加えたから、笑いは一層大きくなった。
誰かが笑い始めると伝染病でも広がるように笑いは広がってゆく。
それが可笑しくて、幸せで、空は心の底から笑った。
————ショーの準備が着々と進んでいるとも知らず……————