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Re: ☆星の子☆   返信200突破記念『キャラ人気投票』開催中! ( No.202 )
日時: 2010/10/26 21:54
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)

7章     55話「追跡」


 2人が廊下を歩いて行く。その後ろ姿を見ながら楓は何をする気なんだろう…と空が考えていると、後ろから聞きなれた声がした。

「楓は……どこ?!」

 光聖君だった。白い顔を一層青白くさせ、瞳を恐怖で揺らせながら聞く。

「日向さんとトイレへ行ったけど…————」

 最後に「どうしてそんなことを聞くの?」と聞きたかったが最後まで言えなかった。光聖君が空の手首をぎゅっと掴んだのだ。サーっと光聖君の血の気がうせ、空の手首を掴んだその手は、雪が降った寒い日の手のように冷たく震えていた。

「痛っ! ちょっと光聖君、なんでそんなに焦って————」

 その声をまるで聞いていなかったかのように、光聖君はより一層空の手首を掴み言う。

「どこに行った?!」

「へ…? え、えぇっと廊下を右に曲がって行ったよ。」

 空が答えると、光聖君はもう2人の姿が見えなくなった廊下を険しい眼で睨んだ。

—————なんでそんなに恐い顔をするの? 何で日向さんの名前を口にした途端顔が青くなるの? どうしてよ。私には言えないの……?—————

 喉から熱いものが込み上げて来て、目頭も熱くなってきた。目には涙が溜まって瞬きをしたら零れ落ちそうだ。
 空は泣きたい気持ちを必死で抑え涙が落ちないよう反射的に上を向いた。目に溜まった水が眼球を潤す。一瞬全部がぼやけて見えて、瞬きをした。途端に涙が溢れ頬を伝う。それを合図に次々と我慢していた涙が溢れる。

(これは欠伸。涙じゃなくて欠伸よ!)

 空は自分に言い聞かせブンブンと頭を振った。
 しっかりしろ、自分!

 幸い光聖君は泣いている空を見なかった。ただ廊下一点に全ての神経を集中させ、食い入るように見つめる。

「行くよ。」

 自分でも気づかぬうちに光聖君は静かにそう言って、空の手首をつかんだまま小走りで楓たちの後を追う。廊下をまっすぐ行くと階段が見えてきた。

 上、下 どっち?

 その時下の方で「キャーッ!!」と悲鳴が聞こえてきた。下で何かが起こった……!!
 気分が悪くなって吐き気が襲ってきた。空は必死に歯を食いしばり先頭を行く光聖君の後について行く。胸騒ぎがする。楓……!
 空は頬に流れた涙を拭い、口をきっと真一文字に結び険しい表情で階段を降りた。

 一階まであと十段はあるだろう。その十段上から空は悲惨な光景を目にした。
 自分でも気付かぬうちに親友の名を叫ぶ。

「かえでーーーーーっ!!!」