コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ 夢?まさかの参照1000突破!! ( No.275 )
- 日時: 2011/06/26 17:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: O/vit.nk)
9章 67話「銀河の警官」
気がついたら闇だった。いつ目が覚めたのかもわからないし、その前に眠っていたのかも微妙だ。こんなに不安なのは初めて。こんなに孤独をひしひしと感じたのは初めてだった。
「ここどこ?」
私は誰に話しかけることもなく囁いた。真っ暗闇を手探りで歩きまわる。
—————暗闇の中に私独り…? 永遠にこのまま—————?
言い知れない恐怖に襲われて、私は膝を抱えてうずくまった。静粛が暗闇を満たす。
どのくらいそうしていただろう。何時間もうずくまってたかもしれないし、あるいは一瞬だったかもしれない。不意に辺りが明るくなった気がして私はパッと顔をあげた。…でもさっきと何ら変わりない。ずっと暗闇のままだ。
気のせいか……。
私はまた膝の上に額を乗せて目を瞑った。寝たらこの悪夢から覚めるかな…?
「!」
目を瞑ってすぐ闇を光が照らした。今度はさっきよりも強くはっきりと。
今度こそは目の錯覚ではない……! そう思って顔を上げた後、闇で何も見えない周囲をぐるっと見回した。
……。
…あった!! あれが光の正体か…!
私が見つめる先には、灯台のように辺りを照らしてくれる、私にとっては神のように素晴らしい、温かい、仄かな光があった。
その光はどんどん輝きを強く放ち私の方に近づいた。そして、私の目の前で止まった。
丸い球場の光。温かくて私に希望をくれた光。
その全てが愛おしかった。その光の声を聞くまでは。
≪私に手を触れて。≫
光はどこから声を発したのか、そう言った。私はその声に聞き覚えがあり、でも信じたくなくて、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。空耳かもしれない……。そう思いたかった。
≪さぁ、早く。≫
「…な、なっちゃん? 安藤なつみちゃん…??」
≪そうよ、当り前でしょ。さぁ、早く。≫
声の正体がわかり放心状態の私に向かって、なっちゃんの声をした光はもう一度せかす。
「ど…どうして? どうしてここにいるの? 何で光がなっちゃんの声なの?」
≪私がここにいちゃ悪い? 私が光になったのが可笑しい?≫
光はふんと鼻であしらい私に近寄る。私は座ったまま半歩後ろに下がった。
≪何故逃げるの? 私はあなたをここから出そうと力を貸してるだけなのに。≫
「だったらなんで光聖君があんな目に…? やったのはあなた達なんでしょう?」
≪あら、勘はいいのね。さぁ、早く手を…≫
「どうして私を助けるの? ここに来てしまったのはあなた達の所為なのに。」
私はなおも言い張った。
光は呆れたようにため息をついてグイッと私に近寄る。そんなのどうでもいいでしょ、と呟いて私の目の前で止まった。
光が…光が温かい…。
でもなんでなっちゃんの心は冷たいんだろう? どうもなっちゃんは本当のなっちゃんじゃない気がする。本当のなっちゃんはもっと…———。
光が私の目の前からふっと消えて、私は現実に引き戻された。疑問符を浮かべて目を下の方にやる。すると…——いた。光は私の手の前でふよふよと浮いていた。
「あっ! ちょっ、なにするのっ…!」
光は私のささやかな抵抗を無視し、私の手の平の中にす…と入っていった。強引は嫌いなのに、と誰にも聞き取れないくらい小さな声で呟いて。
光が消えた途端、ふと辺りが真っ暗になった。いや、さっきから暗かったのだがそれよりも暗い。世界中が停電になってもこんなに暗くはならないだろう。漆黒に包まれて私は震えた。異常といえるくらい震えが止まらない。でも私がそうしていて束の間、お腹の内側からグイッと引っ張られるような感覚がして、私は闇に引きずり込まれた。
どのくらい眠っていたのだろう———いや、眠ってないかもしれない———私は目が覚めた。「うっ、眩しい!」と私は小さく悲鳴をあげゴロンと仰向けからうつ伏せに体制を変える。そしてやや細めに目を開けて外を観察した。久しぶりの光に目が眩みチカチカする。
普段は何とも思わない日の光に、感謝の感情が芽生えた。
やっと目が光に慣れてきたころ、なっちゃんの声が話しかける。
「さぁ、もう目も大丈夫でしょ。立って。いいもの見せてあげるから。」
言われたとおり私はよろよろと立った。そして辺りを見回した。
私が立っているここは、どこかの屋上だった。空は墨をまんべんなく塗ったかのようにどっぷり暮れていた。
屋上の端まで行って下を見てみた。この建物は10階以上あるのだろう。とても高くて底まで見えなかった。でも不思議と怖くない。
この建物の横には木があった。とても高い木だ。揺れているところを見ると、風が吹いてるらしい。でも感じない。ここでは私は何なのだろう。
- Re: ☆星の子☆ 夢?まさかの参照1000突破!! ( No.276 )
- 日時: 2011/02/14 11:51
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
- 参照: http://http://musicmovie.blog48.fc2.com/blog-entry-6397.html
そうしていたら横に光が並んだ。光は数秒浮遊した後、パンと弾けるかのように眩い光を放って姿を変えた。途端になっちゃんの姿になる。
私はもう何を見ても驚かなくなった。もう一生分の怪奇現象を味わってるのだから。いちいち驚いてたら心臓が持たない。
「ここはどこ?」
静かな声でそう聞いた。もし落ちたらしゃれにならないから、数歩後ろに下がってなっちゃんを見る。なっちゃんは私の記憶の残像にあるなっちゃんそのものだった。少しカールしている髪も、とても可愛い顔立ちも、服装までWデートした時と瓜二つだった。何もかも見透かしたような茶色い瞳で私を見つめる。
とても澄んでいる……。本当に悪いやつなのだろうか。それさえも疑わしく思えるほど、真っ直ぐな瞳だった。
一度ゆっくりと目を瞑って、なっちゃんは言った。
「ここは光聖の忘れられない過去のひとつ…。神谷琉…本名流斗との最後の別れの日よ。いつものように失敗して地上に落ちてしまった光聖が行きついた場所は、世界でも名のある病院の、ある一人の少年の病室だった…。」
「それが琉斗くん?」
待ちきれずに私は訊いた。これが光聖君を悩ましてるのか…。そう思うと気が気でならなかった。
なっちゃんは静かに頷いた。
「そう、それが彼。琉斗は重い心臓の病気でね…。余命まで告げられてたの。そんな色を失った病院生活に光聖が飛び込んできた。彼にとっては、とても支えになる存在だったんでしょうね…。友達もいない、医師は重い言葉ばかり言うし、家族とも…なんか溝ができちゃってね…。で、この日私たち3人…って言えばわかるでしょ? 私たち3人が光聖を捕らえに来たの。光聖と琉斗は必死に逃げたけど、途中で琉斗の病状が悪化してしまった。ヒナ…じゃなくて、茜が治そうと出来る限りのことはしたけど、無駄だった。もう助からなかったの。で、そのまま光聖を捕まえるのは悪い気がしたから、2人を残して私たちは屋上で待ってると言い残し、去った…。もうそろそろ私たちがここへ来る。今頃光聖は琉斗と最後のお別れをしているでしょうね…。」
なっちゃんはようやく言葉を切った。長い話だったからいろいろ聞きたいことがあった…。でも何から聞けばいいか分からず、私は口を閉じる。
そんな私の心を察したかのようになっちゃんは「見てなさい。」と言った。
「これからすべて分かるわ。」そんななっちゃんの言葉に、私は知らず知らずのうちに頷いた。
そうして何分かしただろうか、不意になっちゃんが「来た」と呟いた。そう言った直後扉が開き、3人の人物が姿を現した。まるで警官のような格好をした3人は私たちのすぐ近くまで歩いて、私など見えないかの様に3人で話し始めた。
「でも本当に来るか? あいつ。」
リーダーのような人が言う。こちらに背を向けているので顔は見えないが多分男だろう。
ん…男? なっちゃんたち3人は女の子のはず…。
そこまで考えて私は思い出した。光聖君は動物にも物質にも、女にだって変身できるということを。
じゃあ…なっちゃんも光聖君と同じ迷い星クズ?
そこまで考えて私は不意に思考を止めた。今までじっとしていた3人が同時に屋上の入り口を見たからだ。私もつられて見る。…さっきと変らない扉…。そう思いきやバン! と扉を倒さんばかりの勢いで若き頃の光聖君———今とそう変わりないが———が姿を現した。
琥珀色の髪、整った顔立ち…。変わってるところと言えば、悲しみで燃えたぎった茶色い瞳と、涙が流れ落ちた跡のある紅潮した頬だった。
そんな彼が大声で吼える。
「おい! 約束した通りちゃんと来たぞ! お前らは何なんだ!? 言え!!」
そんな見たこともない光聖君に私は怯えた。彼ならどんなに強い人間だって、動物だって、倒せてしまうのではないか…。そう思わせるほど凄まじい気迫だった。
そんな光聖君を制するように手を上げて、リーダーらしき人がなだめる。
「まぁまぁ、そうカッカしなさんな。私たちはただの警官さ。『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』…聞いたこと無いか?」
「! …お前らが? …昔聞いたことがある…。僕等の故郷を取り締まる警官…世界の平衡を乱すものをすべて容赦なく排除する、まるで鬼のような奴らだと…。」
「…パーフェクト、と言いたいところだが容赦なく排除するわけではない。上の差し金でね…。」
リーダーの左側にいた人が———光聖君から見ると右だ———不敵に笑う。私は彼ら3人の横にそろりと移動した。こっちの方が状況がよく見れる。
光聖君は納得したように鼻を鳴らし、3人を睨みつける。体は今や攻撃態勢だ。
次に光聖君から見て左側の人が話した。
「理解していただけたようね…。そう、あなた達迷い星クズは私達の平衡を乱す…と上はお考えなの。私たちはその無法者を排除すまで、よっ!」
相手の行動のほうが早かった。
3人は同時に地を蹴り高く飛ぶ。散らばって挟み撃ちにしようって寸法だ。相手は飛びながら腰に下げてた銃を抜く。そして、その銃口を光聖君に…向けた。
「危ないっ!!!」
知らず知らずのうちに私は叫んだ。と、その声がまるで聞こえたかのように光聖君が刹那、身を伏せる。その伏せた身のすぐ上を光の銃弾が通り抜ける。その光の銃弾は入口の扉に当たった途端弾けて網になった。網は扉全体を覆った。
ちっ、と舌打ちして何を思ったのか光聖君は前方へ走る。空中にいる相手と真正面から向き合い、睨む。
すると相手の方も一人で十分と思ったのか、真ん中にいたリーダーが一人で光聖君を迎え撃つ。
2人の距離がある程度近くなった時…————目のくらむ閃光と共に何かが起こった。超平凡な私には何が起こったか知るはずもなかった。
既に、決着がついたからだ。
勝者は…相手の方だった。
光聖君は体を束縛され、頭には銃口が向けられている。
「ふん。私達と元は同じと言えど、やっぱり星クズだな。所詮はその程度ってことだ。」
相手はそう言って渇いた声で笑った。
光聖君はその手が緩んだ一瞬を見逃さなかった。瞬時に一回り小さいチーターに変化する。そして優雅に敵の腕を抜けて走った。相手の手が届かないところまで来て次は鳥に変身する。そしてその素晴らしい琥珀の翼を羽ばたかせ…飛んだ。