コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 祝!! 70話です♪ ( No.325 )
- 日時: 2011/04/09 16:34
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: O/vit.nk)
- 参照: 今回は光聖君の妄想が暴走してますww
10章 70話「サイコメトラー・リン」
おかしいな…。誰かが僕を呼んでいる。僕の名を呼んでくれる友なんかいないはずなのに。…僕の名前なんてあったっけ?
僕はこのモヤモヤを晴らそうと目をうっすらと開き、僕の名を呼ぶものを探す。
すると僕が起きたことに気付いたのか、ある人物が目に涙を浮かべ、再度僕の名を呼ぶ。
光…聖……琉がくれた名前だっけ…。琉のことを思うと自然と口元が綻ぶ。すると僕の名を呼んだ女の子も微笑んだ。
彼女は髪を肩のあたりまで垂らし、茶っ気の多い毛先はカールしている。素直な瞳は漆黒で、その瞳には大量の涙が今にも溢れんばかりに溜まっている。
「…そら……」
自然と彼女の名前が口をついて出た。空と呼ばれた人物はついに溜まっていた涙をポロポロと流して僕に抱きついてくる。
「光聖君っ…無事でよかった……!」
僕はそんな彼女をズキズキと痛む腕を精一杯伸ばして優しく抱きしめる。すると空に触れた手から覚えていたのに忘れていた何かが流れ込んできた。
人間の優しさ、生きることの大切さ、団欒の暖かさ、大切な人が死んだときの悲しみ、裏切られた時の悔しさ、その他の喜怒哀楽————それらは全て、琉や輝さん、そして空たちが教えてくれた。どれも僕にとっては大切なもの。失くしてはならない感情だった。そういう感情が、心のピースが、戻ってくる。
それを感じ僕は涙を流した。何の感情から生まれたのかもわからない、全てが入り混じった涙。
それを見て空が心配そうな顔をして尋ねた。
「大丈夫? どこか痛い? やっぱり毒がまだ効いてるのかな…?」
その空の問いに、僕ではなく扉から入ってきた第三者が答えた。
「そんな筈はない。ちゃんと解毒剤は飲ましたんだから。」
入ってきたのは伊集院琳ことリンだった。青い警官の服を纏い故郷の印——いわば国旗のようなものだ——が描かれた帽子を被っている。しかし、いつも顔を覆い隠す黒いスカーフはしておらず、つやのある金髪を一つにくくり見る人を引き付ける鋭い瞳で、『美』をつけていいほどの美少年は僕を見据えた。
空はその少年に対し可愛いらしい笑顔を向けて頭を下げる。
「ありがとう。おかげで光聖君も目を覚ましました。」
「それはよかった。」
「おっ…お前、G−——」
「リンでいい。」
彼は僕にそう言い放った。僕は微妙な違和感を覚えおそるおそる彼の名を呼ぶ。
「…リ、リン。」
「なんだ。」
「僕を助けてくれた…のか?」
「別に。お前には解毒剤をやっただけだ。我等に課せられた使命のために。」
「でも助けてくれたんだよね?」
「…まぁ、そうなるかな…」
空は破顔一笑して彼——リンを見る。リンも笑ってはいないがいつもより穏やかな表情をしている。
…もしかしてこいつ、僕が寝ていた間に空をその甘い笑顔で虜に———!!
と、くだらない妄想を僕が始めた途端、リンが僕の頭部をゴツンと叩いた。
「変なこと考えるんじゃない。俺に隠し事は通用しないって、前言わなかったか?」
「あ…」
そうだった、こいつは人の心が読めるんだ。
ということは…さっきこいつの顔が緩んだのは、空が(かっこいいなー)とか思ったのをお得意のサイコメトラーで聞いて照れたから…
そう考えるとまたどうしようもない怒りがふつふつと沸いてくる。
確かにこいつはかっこいいけど敵だし大腿顔を見て男を決めるのはどうかといや別にこれは妬んでるわけじゃなくて決してあいつになりたくなんかは
「ふふっ」
と、不意に笑い声が聞こえたので僕は思考を中断させた。次はさっきとは違う怒りで彼を睨みつける。
「おっ…お前っ……!」
「全く…進歩のない奴だな。」
僕はリンの隣で可笑しそうに笑っている空に目をやる。と共に羞恥心で頭から蒸気が噴き出るくらい真っ赤になった。
「そっ空まで何笑ってんだよ?」
「だって心が読めなくても、光聖君が考えていること私にだってわかるもん。」
「なっ…!」
僕はそんなにわかりやすいのか、と自分に失望し、リンゴが熟したように真っ赤になった自分の顔を隠そうと空から目線を逸らし辺りを見回した。
白で塗装されベッドが数台しかない病室のような殺風景を見て、自然と琉と過ごした日々を思い出す。そこで、今まで考えなかったことが不思議なくらい、当たり前の疑問が浮かんだ。
「あれ…ここどこ?」
「それを空に話しにここへ来た。お前も聞いとけ。」
冷徹な面持ちでリンは話し始める。
「今俺たちが乗っているのは『銀河の警官』が移動する時や休憩時に使う、ロケットと飛行機が合わさったようなものだ。名は言わないどこう。極秘だからな。」
そういって彼は瞳をキラリと光らせた。僕と空は顔を見合わせ首を傾げる。
ロケットと飛行機が合わさったようなもの…?
いまいちピンとこなかったが、そんな僕らを余所にリンは話を続ける。
「この乗り物は陸地を走り、海を渡り、空を飛んで宇宙までも行ける、それこそ出来ないものなんて何もない万能なものだ。しかしそういうものにも不良品があってな…(そう言いながらリンは僕を盗み見た。)人間には見られないよう透明にもなれる措置を施しといたんだが、どうも上手くいかなくて人間に見られてしまったこともある。しかし後にUFOという仮説が作られ我等の存在は知られることはなかった。」
空は目を大きく見開き僕のほうを無意識に見る。僕はこの事について妙に納得し、思考が螺旋を描き加速するのを止めなかった。
リンはそんな僕を見てたしなめる。
「ここから逃げようなどは考えないほうがいい。」
グッと悔しげに思考を中断させる僕の横で空が首を傾げリンに問う。
「私たち、どこへ向かってるの?」
その問いにリンは不敵に笑みを浮かべ、瞳をキラリと光らせた。
「我等の本拠地だ。」