コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ☆星の子☆  ※お知らせあり※  『キャラ人気投票』    ( No.411 )
日時: 2011/08/17 10:50
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: uRjlitq/)
参照: 望月先輩がカッコよすぎるっ……!!

 ————と、眼の端に見慣れた人物が映り、私は顔をあげた。
 その人物は茶色の混ざった黒髪を雨に濡らし、心なしか潤んでいる瞳を揺らし、立っていた。
 私は一瞬、心臓が止まった思いだった。やっと言葉を繋ぎ話しかける。

「み……みっくん? どうしてここに……」
「……葵ちゃんがまだ帰ってきてなかったから、雨で困ってるかと思って——だけど、邪魔しちゃったかな。」

 家が近所のみっくんは私を心配してきてくれたようだった。傘をささずに、ここまで走ってきてくれたらしい。
 雨でぬれた顔をくしゃっと歪ませみっくんは精いっぱいの笑みを作った。しかし、その笑みが無理矢理作った偽物の仮面だと、私は一目でわかった。

「違うの、みっくん! これはそうじゃなくて……」
「無理しなくていいんだよ、葵ちゃん。言い訳なんかしないで——」

 そこまで言うと彼は今来た方向へと駆け出した。跳ねた泥のせいだろうか、視界が歪み何も見えない。
 私が追いかけようか迷っていると、横で口を挟まずに立っていた望月先輩が、私の持っていた傘を手に取った。無表情でたった一つ、言う。

「行け。」
「——っ、ありがとうございます! さよならっ。」

 そう言って私は彼を追う。
 望月先輩はとっても優しかった————でも、私の心にあるのは……!
 ただ、私は彼を追う。自分が何をしたいのかも知らず、彼に辿り着いて何をするのかもわからない。
 ただ、体の動くままに追う。体が泥にまみれても、足が動かなくなっても。
 交差点についた。私がたとえ全力で走ってもあのみっくんに追いつく筈がない。完全に見失ってしまった。

「はぁ……」

 私は立ち止った。雨が私を叩く。水がぽたぽたと音を立て、落ちる。

「寒っ……」

 もう6月中旬なのに冷たい雨が私を濡らし、冷風が私の傍を通り過ぎる。
 足に力が入らなくなって、私はその場に座り込んだ。顔を膝にうずめて、しゃくり上げる。そして堪らずに自分の気持ちを吐き出す。

「私は、みっくんが好きなのにっ……!」

 後ろに人の気配を感じた。その人物はゆっくり私に近づき、聞き覚えのある声で問う。

「……それ本当?」
「!?」

 私は驚き咄嗟に立ちあがった。顔が上気して何も考えられない。
 後ろにいたのは、紛れもない、みっくんだった。

「ど、どうしてここに?」

 この質問は今日で二回目だ。それに彼は真面目に答える。

「歩いてたら葵ちゃんが僕を追い越して行ったから……」
「追い越した!?」
 
 信じられないことを聞いて、私は倒れそうになった。気が動転して馬鹿になってしまったのだろうか?
 そこまで考えて私はまた顔が赤面した。さっきの完全に聞かれたっ……!!
 私は必死にさっきのを言い繕うと、した。

「さ、さっきのはっ……——」
「——僕も好きだよ。」
「えっ……」
「葵ちゃんのこと。」

 そう言ってみっくんは微笑んだ。私は心臓に矢が突き刺さったように胸が苦しくなり、何も言えなくなった。
 と、嬉しさ半分驚き半分にふらついた私の手首をみっくんが掴む。
 そしてきらきらと輝く笑みを浮かべ、「帰ろうか」と一言彼は言う。

 私たちの上を跨ぐ七色の虹はキラキラと、輝いていた。
 この日は、私の中で最高の日となった。