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- Re: ☆星の子☆ 〜番外編〜 『キャラ人気投票』 ( No.426 )
- 日時: 2011/09/12 17:01
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
12章 83話「戦士たち」
私たちは地が轟くばかりの大歓声の中、呆気にとられ動けずにいた。
ほんの一瞬瞬いた途端乗り物から追い出された私たちに、多くの人たちが集まって来たのだ。
そしてリンさんやガルさんも、これには驚いたらしい。大きな机に並べられた料理の数々を見て目を丸くしている。
そんな中最初に口火を切ったのは、ガルさんだった。
「お主等……一体これは何じゃ?」
そんな彼の問いに10代後半のすらっとした男性が答えた。彼は鮮やかな金髪に、瞳の中で炎が燃えているように赤い、灼眼を持っていた。
「何って、決まっているだろう? 迷い星歓迎パーティさ!!」
「お前等、こっちじゃ有名人なんだぜ? 新聞にも載りまくっている!」
次に、さっきの男性と瓜二つの男が、紙を片手に私達に話しかける。
どうやら二人は双子のようだ。姿形もそっくりで、唯、瞳の色と髪の色が違う。後者の方は、夜空によく映えるだろう銀髪に、深海のように澄んだ青い、碧眼だ。
ガルさんは彼らと同じ事を言う民を見回し、溜息をついた。そして観念したように私たちに紹介する。
「ここにおる者は皆、反乱軍じゃ。今日は三割しか集まってないがの。皆の名前を覚えるのは大変じゃから、今回の戦いにおいて最も重要な奴等だけ紹介しよう。
まず、この双子。二人で戦闘司令官を務めておる。灼眼を持った方がレオで、碧眼の方がウルじゃ。そしてスパイが——おや、またいないの。どこ行った?」
「ガル総司令官、多分あそこでしょう。」
ガルさんの問いにリンさんがあるところを指差した。ガルさんは納得した様子で「グロ、出てこい!」と声を上げる。
それでも私はリンさんが指差したところにどうしても人の姿を見つけることが出来ず、首を傾げた。しかしそれもしょうがない。だってリンさんは建物の影を指差したのだから。
すると程なくしてその影に変化が生じた。影が急に立体的になったかと思うと次の瞬間、その影の上にローブを纏った一人の民が出てきたのだ。
「なっ……!?」
驚いて声も出ない私たちを見て、ガルさんは笑った。
周りの民も全然動じていないところを見ると、この風景には見慣れているらしい。
ガルさんは手招きしてその人物を呼び、私たちに紹介する。
「こやつは儂と警官の仕事をしていたチームの一人、グロじゃ。今回の戦いではスパイを務めておる。こやつの能力はなかなか特殊での。普通『アステリア』の民は動物や植物などの生き物にしか変化できないのじゃが、グロは空気や炎、そして水や影など自然系の物にも変われるのじゃ。そしてさっきのように影や空気そのものと一体化まで出来る。最強じゃろ?」
「一体化というのはつまり、変化した物と同じ存在になるということ。塩水になって海水と一緒になれば、大海原を同じ波という存在で泳げ、今のように影になり物陰に身を潜めれば、只の影という存在で敵を観察できる——とまぁ、そんなところだ。」
私が一体化というのはどういうことだろう? と考えているとリンさんが透かさず説明をくれた。そのおかげでガルさんが話した内容の8割ほどは理解できたので、ホッと胸を撫で下ろしお礼のつもりでにっこりと破顔一笑の笑みをリンさんに送る。
すると何故だか彼は目を逸らし、レオ君とウル君は互いに目を合わせ忍び笑いを浮かべた。しかし光聖君は特に変化もなく、それだけが少し残念だった————って何考えてんだ、私ッ!
と、不可解な言動を残し私は近づいてきたグロさんをまじまじと見る。
黒いローブで体を覆い隠しているので男か女か定かでは無いが——しかし高確率で男性だろう——かなり長身で、小さい私は首を吊るようにして彼を見上げた。
なんだかグロさんが周りから厳かな雰囲気が醸し出していたので、私はおずおずと挨拶をする。
「は、はじめまして、空です……」
「…………」
しかし帰ってきたのは虚しく響く風の音だけ。彼は口を開くどころか会釈もしてくれない。
私が少しふてくされるとガルさんが笑って言った。
「グロはコミュニケーションというものが苦手でな。儂にも滅多に話しかけてくれんのじゃ。許してやってくれ。」
「…………」
ガルさんとも滅多に話さないとは……尋常じゃないくらい人見知りが激しい人なんだろう。
すると少し私と距離を置いていたグロさんが、直角に腰を折り曲げた。そしてあっという間に黒いローブが透明になったかと思うと、次の瞬間空気となって消えてしまった。
「あっ……!」
本当にあっという間だった。しかし、さっきのお辞儀は……
(私に、してくれたのかな……)
そう考えると少し心が温まった。自然と笑みが零れる。
- Re: ☆星の子☆ 〜番外編〜 『キャラ人気投票』 ( No.427 )
- 日時: 2011/09/12 17:02
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
するとレオ君とウル君がこちらに近付いてきた。
怪しい笑みを浮かべ全く同じ動作をする彼らは、見ているととても微笑ましい。だが、そう思えたのも束の間だった。
彼らは急に私の横に移動して挟み撃ちすると、馴れ馴れしく肩を組んできたのだ。
「へっ?!」
「君、空っていうの? 可愛いねぇ。」
「うん、その笑顔がとても魅力的だ。」
二人は同時に顎に手を置き、お互いの言葉に何度も頷く。筋肉がよくついている為か、少しばかり肩が重い。……ところでこれは俗に言うナンパというものなのだろうか?
私が焦って「えっと、あの……」と言葉を探せず戸惑っていると、サラ……と白い髪が特徴的な少年が前に立ちはだかった。透明感のある白い髪は、ウル君の銀髪とはまた違う輝きを放っている。
ニコリと可愛らしい笑顔を絶やさない彼は、その笑顔とは裏腹に異様な雰囲気を持ち合わせていた。
そんな不思議な少年は笑顔を崩さずに、双子に話す。
「駄目ですよ? 女の子を苛めちゃ。」
「おやおや、優等生君のご登場だ。」
「相変わらず頭の固いやつだ。」
二人は顔を精一杯顰めて、盛大に溜息をついた。相変わらず瓜二つで見ている方としてはとても面白い。
少年は私の方に向き直って深々と頭を下げる。
「すいません、急な事で驚いたでしょう。長い旅の後だと言うのに……」
「いえいえ、大丈夫です! こちらこそ、ありがとうございました。」
この少年は見た目と合わず畏(かしこ)まった口調なので、自然と私も丁寧に喋る。
少年はくすりと笑って名乗った。
「私の名はハクと言います。ああいう輩には気を付けて下さいね。線上には女性に飢えている者が多いので。」
「は、はぁ……」
私は他に答えようがなかった。このハクという少年、なかなか棘があるらしい。“輩”等の言葉を使った時点で、『笑顔が可愛い真面目な子』という第一印象は音を立てて崩れた。
するとハクは——この子は呼び捨てでも良いだろう。背丈も私の方が5センチほど高い——「あ」と何かを思い出したような顔をして、笑顔を向ける。
「勿論、女性もいますよ? 極一部ですが。キラとなら、話も合うと思います。」
ハクは私の斜め前でグラスを片手に話し込んでいた女性を指差した。
燃えるような赤い髪に輝く金色の瞳をもった綺麗な女性。背も高くて、それに脚も長い。しかし今日はパーティなので髪の色に合わせて赤いドレスを着ていた彼女は、腰にしっかりと刀を下げており、『私の憧れの女性』という理想像、これもまた呆気なく崩れ落ちた。
私の視線に気づき、キラと呼ばれた女性はこちらを振り向く。そして嬉しそうに駆け寄って私の手を握った。
「やった、女の子! 同士だわ!! 私はキラ、よろしくね。」
見た目が美しく凛々しかったのでクールな人かと思ったが、性格は極めて天真爛漫らしい。私の手をブンブン振って握手する。
と、それを見たハクが口に手を当て透かさず言った。
「あぁ、キラは怪力ですので気を付けて下さい。」
しかしハクがそれを言った時にはもう遅く、私は思いっきり顔を顰めていた。