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Re: ☆星の子☆    85話更新! ( No.440 )
日時: 2011/10/18 20:10
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/

12章     86話「反乱軍と政府軍」


 あれから2ヶ月が過ぎた。
 そろそろ慣れたのかホームシックになる事もなくなり、目の前に戦いが迫っているにも関わらず、私はその世界での生活を楽しんだ。キラや他の子とも交流を深めたし、応急術も学んだので短い期間での大きな成果と言えよう。
 光聖君は日々欠かさず訓練に励んだ。いつもはリンさんが教えてくれるようだが、たまにガルさんやレオ・ウル君が寄ることもあるらしい。最近は少し疲れ気味だけども、それ以上に訓練所へ行くのが楽しそうなので、心配する必要は無さそうだ。

「空、これから会議があるらしい。行こう。」

 と、光聖君が私の肩を軽く叩いた。たくましくなった体型に比例するように、口調も随分大人っぽくなっている。どうやら成長したのは私だけじゃないみたい。
 何の会議だろう? と首を傾げ、私は光聖君の背中を追っていった。

 いつもは入ることの許されない特別室へと私たちは向かう。
 通常はガルさんやグロさんが話し合う時に使っているらしい。
 そんな部屋に私が入っても良いのだろうかと少し扉を潜るのに躊躇ったが、光聖君が力づけるように私の背を押したので、私はつんのめりながら部屋へ入った。
 とても広い部屋だった。
 宮殿のような造りで、白い壁が輝きを放っている。
 そんなだだっ広い部屋の真ん中に、同じく白いテーブルがあった。そして顔見知りの人物が皆、腰掛けている。
 キラやハク、レオ・ウル君にグロさん、リンさん、そしてその他数人。向かいにはガルさんが真剣な面持ちで座っていた。それに威圧され、私は背筋を伸ばす。
 「待っていたぞ」とガルさんが手招きしたので私たちは近くの椅子へ腰を下ろした。
 それを確認し、ガルさんは口を開く。

「昨夜、グロが帰ってきた。素晴らしい情報を持ってな。」

 全員の表情が瞬間綻んだ。吉報と聞いて嬉しく思わない人はいないだろう。
 しかしそんな心を瓦解するように——1部は喜んだが——ガルさんは言葉を吐く。

「明日、政府軍を攻める。戦争準備は整った。後は行動あるのみじゃ。」
「えっ……!」

 後頭部が殴られたように、眩暈がした。言うべき言葉が見つからず、交互にガルさんと光聖君を見る。
 そんな私の耳に地を揺るがす様な声が鳴り響いた。

「っしゃあ!!」
「やっと俺たちの出番ってわけだ!!」
「ふふふ、腕が鳴りますね。」

 レオ君とウル君が立ち上がってハイタッチをする。
 いつもは大人しめなハクも、この時ばかりは二人に「座れ」と注意することもなく、輝く笑顔で答えた。
 リンさんは表情を崩さずガルさんに次の話を急かし、今にも空気と一体化しそうなくらい存在の薄いグロさんは何の動作もなく座っている。
 皆、いつも通りだった。

「政府は儂らが攻めるまであと一年はあると思っておる。強い見方が来てくれた事も、察していない(そう言ってガルさんは光聖君を見た)。この隙を儂らは突くのじゃ。
 まず、吉報を届けたグロを称えねばの。」

 そう言ってガルさんは手を叩く。私たちもそれに続いて拍手を送った。
 グロさんは微かに顎を引いた——2ミリ程度しか動かなかったため、よく見ないと分からない——。
 と、ガルさんが横に置いてあった紙を手に取った。それを回して皆に渡す。
 私も光聖君からもらい1枚だけ置いて、残った紙をキラに回した。
 そして一通り皆の手にそれが分かったのを確認して、ガルさんはその紙を見るように言う。
 チーム表だろうか。
 左の列に東西南北と方向が記されており、その横に私や光聖君の名前があった。

「見ての通り、これはチーム表じゃ。今回我らが攻めるのは政府塔。言わば黒幕お本部じゃな。ここからの距離は——そうじゃな、人間式で言うと5キロくらい先かの。そして攻める方角なのじゃが、今回は4つの組に分かれて東西南北で攻撃する。
 そのチームを今から発表しよう。まぁ、紙に書いてある通りじゃがな。」

 そう言ってガルさんは苦笑する。
 そして立ち上がりチーム表を広げて、謳った。

「東の密林、迷い星光聖・天野空・ユキ・東軍A。
 西の洞窟、リン・セル・西軍A。
 南——ここは少し塔と距離があるから空中戦じゃ。南はレオ・ウル・南軍A。
 北の草原、ハク・キラ・ピア・北軍A。
 儂はここで戦況を窺う。皆に儂の声が聞こえるようにしておくから、命令はちゃんと守るのじゃぞ。危ういことになってきたら、儂も参戦しよう。
 そして残ったBチームは後で送ることにする。いわば応戦じゃな。
 ……ここまで異議は無いかの?」

 各々がしっかりと頷いたのを確認し、ガルさんは士気を強めるように言う。

「今日はしっかりと休んで力を蓄えるのじゃぞ。今回は我らの方が優位に立っておる。この機を逃すな! 今回は勝ち戦なのじゃからな。」

 皆が腕を突き上げ声を張り上げた。
 この空間が全て、一つになっている気がして、私の頬が自然と緩む。

「勝ち戦、ですか……。」

 その時、ハクが呟いた。
 そして私を見て微笑みながら言う。

「頑張りましょうね、勝つ為に。」