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- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.534 )
- 日時: 2012/11/23 12:06
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: ウル—————っ!!(泣)←
その時だった。
俺の後方から小さいナイフが飛んできて、ジオの右肩に当たる。
不意をつかれ右肩を負傷したジオが眉間に皺を寄せた。しかし新しい敵の介入に喜びを隠せない様子だ。何処か楽しげな声色で尋ねる。
「……誰だ?」
「なるほど……確かに再生が早いですね。流石『銀河の警官』の最高執行部隊隊長、と言った所でしょうか?」
俺のすぐ後ろに、その声の主はいた。
流れるような白い髪をかきあげ、いついかなる時もその幼い顔に笑みを絶やさない彼を見て、俺は言い知れぬ安堵感で胸がいっぱいになるのを感じた。
ハクは苦笑しながら、それでも冷静に敵の能力を探る。
と同時に本拠地の方から再び“思念”が送られた。
『たった今北軍が第一敵軍を打ち倒した様での。そちらにハクを寄越した。援軍が来るまでの時間稼ぎに過ぎぬが……』
(ハク一人で充分。サンキュー、ジジイ!)
『うむ。これ以上兵士達を減らしてはならん。ハクと力を合わせ、頑張るのじゃぞ。』
そう言うとガルは慌しく“思念”を断ち切った。本拠地も大変なようだ。
でもあの老いぼれには感謝しなくちゃな。ここでハクが来てくれたのは、かなり心強い。
ハクは小柄だが持ち前の冷静な洞察力と頭の切れの良さで、技を外すことはほとんど無い。また、動きもすばやく敵の攻撃を華麗によける。小さいからと言って侮ってはいけない、反乱軍にとって自慢の戦士なのだ。
そんな彼はふわりと微笑んで言った。
「貴方方がところ構わず火花を散らすものですから、見つけるのにさほど手間はかかりませんでしたよ。しかし大袈裟に力を振りまくのは、やめてほしい所ですね。」
「ははっ、相変わらず優等生ちゃんはキビシーや。」
「ま、全力で戦っていた事は否定しねーけどな!」
「それと……南軍だというのに西の方にどんどん移動していますよ? まぁ、運がよければ西軍の援護を期待出来そうですが。」
ハクは溜息混じりにひとつずつ注意してゆく。しかし本気で怒っている様ではなく、むしろ楽しげだ。その顔が、不意に引き締まった。
それが合図となったかのように俺等はジオの方を向いて、再び構える。
ジオはけだるそうにそれを見つめ、何の感情も無く吐き捨てるように言った。
「どうせ一人増えた所で何も変わりはしない。」
「ハクを舐めたら痛い目見るぞ?」
俺は真剣な顔で敵に忠告する。そして地を——いや、宙を蹴り加速して走り出した。
「ハク! 作戦A、奴の心臓を狙え!」
「了解。」
俺とレオはそれぞれ左右に移動し、ジオを真ん中に挟み撃ちのような形になった。
ハクは正面から、最も良いタイミングを見計らい心臓を小刀で狙う。
双子の雄叫びが重なった。俺達は先程の雑談時からこっそり溜めていた青い火の玉を、なげるのではなく直接奴の左胸に打ち込む。
赤と青の炎が融合し、紫色の禍々しい力の奔流が弾けた。
それは僅か数秒の出来事だった。ジオは鋭い痛みに、群青の瞳をかっと見開く。しかしそれも束の間、その目を細め軽蔑した瞳で俺を見据えた。失望したような顔で、声を低くし言う。
「お前等こそ、どこに目つけているんだ?」
「なに……?」
「ウル!!」
俺はジオの言葉が理解できず、間抜けた声が出る。と、レオが驚愕に目を大きくし、俺の名を叫んだ。
何だよ、そんな大声出して……ははっ、そんな地獄でも見たような顔すんなって。
そうレオに声をかけてやりたかった。しかし上手く言葉が出ない。
自分の腹を襲う激痛に気がついたのは、少し遅れてからだった。
「————っ!?」
突如襲った激しい痛み。まるで横っ腹全てを抉り取られたような錯覚を覚える。
やべぇ、立ってらんねぇ……。
朦朧とする意識の中、何か異質な物が腹を貫通している事だけは馬鹿な俺にも分かった。
突然、ぐらりと視界が傾いた。足に力が入らない。そのまま空中に足場を作る事すら出来ず、ただ重力に身を任せ落下していく。
意識が消えゆく狭間に見えた、レオの顔。遠ざかる双子の瞳は、怒りと憎悪に燃えていた。