コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.554 )
- 日時: 2013/02/14 20:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: 最新話107話の前にお読み下さい。
「あのね、私妹が居たの。私は昔から運動とか大好きでよく外駆け回っていたんだけど、妹は打って変わって大人しくて。それこそ読書とかが大好きな妹だったんだ。……あ、名前はユラって言うの。そのユラが、よく学校行きたい、って言っていた事を思い出して。」
「あの、こんな事を聞くのは何ですが……他界されたのですか?」
「うん……もう七年くらい前の話かな。妹とは、趣味こそ違ったけれどとっても仲良しだったから、その時は何日も食事が喉を通らないくらい、ショックだったわ……。」
その頃を思い出し、楽しかった記憶とこの世に絶望した日々が入り混ざって走馬灯のように私の脳内を駆け巡った。
すると次は目尻が熱くなり視界が歪んできたので、私は目をしばたかす。泣き顔は、見られたくなかった。
「……死因は?」
ハクが聞き辛そうに問う。
思い出す。
あの血塗られた日の事を。目の前で音も無く消滅した大切な家族を。政府に強い憎悪の感情を抱いた事を。また、一瞬だけ見えた、妹を殺した奴の後ろ姿を。そして……
その仇を討つため、反乱軍に入隊する事を決意した、忘れられない満月の夜を。
様々な感情が込み上げてきたが、私は一言簡潔に言う。
「政府の人間に殺されたわ。」
ハクが隣で息を呑んだ。
私は続ける。
「私の目の前で、喉を掻っ切られた……確か短剣だったと思うんだけど、肝心な敵の顔を見てないの。」
「もしかして反乱軍に入った理由も……。」
「うん、そいつにこの手で復讐するため。
————ってこんな暗い話はもうやめよ!」
これ以上話すと自分を見失いそうで怖い。
私は無理に笑顔を作り、明るく言った。ハクはまだ何か聞きたげだったが、諦めたように口を噤み寂しく微笑んだ。
私は再びハクの手にある本に目を止める。
何故だか先程からハクは、その本を隠すように後ろに手を回していた。
「ところでさ……さっき話逸らされたけど、その本なぁに?」
「え、えっと、これは……」
ハクが目を逸らした。苦笑いを浮かべながら、さりげなく本を私の目に見えない位置へと遠ざける。
……怪しい!
私は不敵な笑みを浮かべ、本へ手を伸ばした。ハクが素早く避ける。
「逃がさないわよっ!」
そう言って私はそれを掴みにかかった。
ハクは必死に逃げるが、私の方が身体能力は上。結果、数秒後にはその本は私の手にあった。
私は獲物を狩るような目つきでその表紙をさっと確認する。
驚いて声が漏れた。
「————心理学?」
「あまり見ないで下さい……。」
ハクが珍しく頬を赤らめる。
しかし私は可笑しさに笑いを堪えながらも、ぱらぱらとページを捲った。
と、何やら本の右端に折り目がついているページを発見する。
どれどれ……。
私は一番端にある、大きなフォント文字で書かれた題目を読み上げた。
「えーっと……『人は笑顔に騙される!? 良い人を演じたいなら笑顔は必須!』……
あはは、何これ! まるでハクじゃない!!」
ついに我慢が限界を超えた私はお腹をかかえ笑い転げた。笑ってしまうと止まらないもので、涙まで溢れてくる。
一方ハクはと言うと、私の言葉に一瞬身を硬くした。そして少し不自然な笑いを浮かべ「ご冗談はよしてください」と力なく言う。後になって考えると、あの時のハクはいつもより大分おかしかったが、私は私で笑い続けていたので別段気にならなかった。
それからしばらく経ってようやく落ち着きを取り戻した私は、少しハクに申し訳なくなり本を返した。
ソファに腰を下ろす
そんな私達を、不意に満月が顔を覗き明るい月光で照らした。窓から差し込む幻想的な月明かりを眺め、私は先程の会話を思い出す。
無意識のうちに、私は言葉を紡いでいた。
「——ハクは……反乱軍に入った理由、あるの?」
「僕、ですか。」
ハクは予想すらしなかった質問に、一瞬言葉を詰まらせる。
しかし次に妖艶な笑みを浮かべ、私に優しく囁いた。
「また機会があったら、教えますよ。——二人きりの時に、ね。」
その瞬間私の心臓が騒がしく鐘を打ち鳴らした。鼓動がうるさい。心臓が破裂しそうだった。
頬を紅潮させ口をパクパクしていると、そんな私を見かねたようにハクが忍び笑いを漏らした。腰を曲げ、クツクツと楽しそうに笑っている。
「ひ、酷い! からかったのね!」と言うと「先程のお返しですよ」と返された。確かにその通りだから文句も言えない。
そしてしばらく膨れっ面をしていた私は、「でも——」と声色を明るくする。
「戦争が終わったら、ちゃんと話してね。約束よ。」
そう言って私は右手の小指を、ハクの前に差し出した。
ハクは複雑な表情をして一瞬戸惑う。が、諦めたようにふっと笑い、自分の小指を私の小指に絡めた。
胸の辺りが温かくなり、私は幸せな気分になる。
すると私は思い出したようにまた、「あっ、それと……」と付け加え、少し強く言った。
「戦争に勝ったら、一緒にまた普通の、幸せな生活を送ろうね。これも絶対よ!」
それを聞いたハクは、いつもの微笑とは違う反応を示した。勿論笑みなのだが、泣き笑いのような……それでいて何処か寂寥感の漂う、そんな笑み。
何だか不安になった私が心配して顔を覗き込むと、ハクは今にも消えそうな優しい笑みを浮かべ頷いた。
「————そうですね。」
この後、いつの間にかお互い眠ってしまい、起きた時には私の頭はハクの膝の上にあった。
つまり彼に膝枕されていたのだが……これはまた別の話。