コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ ( No.70 )
- 日時: 2011/11/05 19:51
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: qRt8qnz/)
4章 29話「割れたコップ」
「ごめんね〜、なっちゃん。」
昼食の時間、私は必死になって、なっちゃんに謝った。でも一番怒ってるのはなっちゃんではなく、何故だか楓だった。
「もうっ! 空は使い物にならないんだから。」
その言葉、酷くないですか? 私、物じゃないんだからね?
私はいっそのこと全部言ってしまいたかったが、ぐっと我慢した。確かに悪いのは私だ。
意外にもなっちゃんは冷静沈着だった。
「いいよ〜、そんなに謝らなくても。だったらダブルデートにしちゃえばいい話じゃん。」
まったく表情を変えずにさらっと言ったなっちゃんを、私は呆然と見つめた。
ちょっとよく聞こえなかった。雑音がいくつか耳に入ってきたらしい。
気持ちが落ち着いてきた私は、なっちゃんにずいっと近づいた。そして再度さっきの言葉を聞こうと唇を開く。
「ダブルデー…」
そう私が言いかけた途端、パリーンと鋭い音がした。私がコップを落として割ってしまったのだ。
このとき3人は秘密の話なので額を寄せ合って話していた。そして私がズイッと前に出た瞬間、肘がコップに当たってしまったのだ。
瞬間私の心臓はコップと共に引き裂かれそうだった。そのくらい驚いたのだ。
周りは一瞬静かになり重苦しい沈黙が続く中、皆が私を見つめた。……途端にガヤガヤとどよめき始める。
私に近づき大丈夫? と声をかけてくれる子や、遠巻きにして見る子までいた。その中で私はただ呆然と立ち尽くしていた。
(破片を拾わなきゃ……! でも素手じゃ危ないし、かといって箒を取りにみんなの間は通れない……。どうしよう。)
それに一番の原因は足が思うように動かないことだった。それほどコップが割れたショックが大きかったのである。
と、横目で光聖君が駆け付ける姿が目に入った。しかし、それより前にすっと箒を持ってきてくれた人物が一人、優しい抱擁感のある表情で私の前に現れた。
「佐藤君……!!」
なんとあの、何でもできるパーフェクト男子の佐藤統君だったのだ。
佐藤君は箒と塵取りを持って、さっさっとコップの破片を処理してくれた。
「大丈夫だった? 怪我してない?」
そんな優しい言葉をかけてくれる佐藤君にドキドキしながら私はこくりと頷いた。動悸が激しくて、少し息苦しい。
やっぱり女子が騒ぐのもわかる。とってもかっこよくて優しいんだもの。
すると楓となっちゃんが近づいてきた。そして私に代わってお礼をしてくれる。
なっちゃんはその後、一歩前に出て可愛い笑顔を作って唐突に言った。
「そうだ、佐藤君! 今度の日曜日、私たちと一緒に映画見に行かない?」