コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ コメントください。 ( No.96 )
- 日時: 2011/12/10 16:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 4V2YWQBF)
5章 36話「安堵の涙」
数分後、私は倉庫のようなところで目が覚めた。椅子に座っていて手は後ろで縛られている。
目の焦点が合ってきたので私はあたりを見回した。
そこは薄暗い倉庫のような所だった。男が数人バットのようなものを持ちながらニヤニヤ笑っている。
私はそこで見覚えのある男と目が合った。じっくり見れなかったけどカフェに寄った帰りに後をつけてきた男だ。なんとなく雰囲気でわかる。
その男は黒い髪をボサボサにしてよれよれの服を着た、だらしのない格好をしていた。
私は恐怖の感情を押し殺し、キッと睨んだ。
————こんな奴らに捕まるなんてっ……————
思いっきり尻を蹴ってやりたいが、そんな力もなければ勇気もない。それに手首を縛られては何もできない。今や私の心には屈辱感でいっぱいだった。
「リーダー。あのお方が探していた女はこいつで合っているんですか?」
男たちが何やらひそひそ話している。
その中でリーダーと呼ばれた男が頷いた。
その男は一人、皆と違う雰囲気を漂わせていた。汚い感じじゃなくて……そう、自分のやるべきことのために動いている感じ。
帽子の奥から綺麗な金髪が見え隠れする。
「あぁ、貰った写真を見る限り間違いない。睨むくらいの力もあるとは……雑用にも使えそうだ。」
私はぞっとした。嫌な冷や汗が背をしたたり落ちる。
(もしかしてこの人たち、私を売りとばす気?!)
そんな考えが頭をよぎる。
家に帰りたい。お母さんに会いたい……。
ここはどこなんだろう? 今何時? 長時間は寝ていないと思うけど……。
いろいろ考えたら目尻が熱くなってきた。今にも涙が零れ落ちちゃいそう。
でも、泣いちゃだめ。泣いちゃだめ。
こんな奴らに涙なんか見せるもんか!
そうやって私がぐっと涙を堪えていたその時——!
ガラガラガラガラ……
倉庫の扉が開いた! 薄暗かった倉庫に希望の光がさす。
眩しい光が私を温かく包み込んだ。
その光の真ん中に立っていたのは……
「光聖君!!」
私は喜びの余り叫んだ。
光聖君がウインクするのが目に入る。
そして彼は、目にも止まらぬスピードで男たちと勇敢に戦い始めたのだ。
キック、パンチ、回し蹴り…余裕だと思ったのだろう。アクロバットを披露しながら優雅にやりあう。
そんな光聖君に見とれている間に勝負はついた。圧倒的な光聖君の勝利だった。
手首のロープを解いてもらいながら光聖君は胸を張った。
「だから、何でも出来るって言ったでしょ。」
そんな光聖君はもう、子どもになんか見えたりしない。勇敢な男の子だった。
「ありがとう……。」
そう呟きながら私は涙を流した。
安堵の涙を……————