コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ☆星の子☆     コメントください。 ( No.97 )
日時: 2011/12/24 16:58
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)

5章     37話「いたって簡単な…」


 怖かった。足がすくんで立てなくなるくらい。
 不安だった。心の底から暗い手が招いてるかのようだった。
 でも来てくれた。
 コハク色の髪をなびかせて。空を舞うかのように戦って。
 光の世界に連れ戻してくれて————
 尽くしきれない感謝はどう表現すればいいのだろう。どんな表情を浮かべればよいのだろう。
 感謝の言葉を口に出そうとするたびに、胸の鼓動が邪魔をする。声が出てこない。
 この鼓動は何故なのだろう。
 怖かったから? 安心したから? それとも……。

 彼は道を知っているのだろうか。
 さっきから何も話さない。無表情で私の手を引いていく。
 そういえば……どうして私の居場所がわかったのだろう。
 1分おきに後ろを確かめていたのに。誰も来ている気配はなかったのに。
 不思議な子。でも彼がいたから救われた……————


「空、今何時?」

 唐突に光聖君が話しかけた。私は驚いて小さく悲鳴をあげてしまい、彼の瞳が私を貫くのを痛感しながら腕時計で確かめる。

「あれっ? まだ1時半だ。今から間に合うかな? ……光聖君ここがどこだか分かるの?」
「う〜ん……。空中で見ないとどうとも……」
「えっ、じゃあ私を助ける時鳥とかに変身しながら来たの?」

 私は仰天して聞いた。それってかっこいい…のかな?
 そんな私の質問に光聖君は当然のような顔をして答える。

「当たり前。そうじゃないととても見つけられないよ。丁度空が意識を失っている時に見つけたからまだ運が良かったけど。もう少し遅かったら倉庫の中だったから危ういところだったよ。」

 光聖君はそう言いながらのんきに笑った。彼の辞書に“緊張”という言葉はあるのだろうか。
 こっちは大変な目にあったって言うのに!
 ……でも怒ってはならない。こっちには恩があるのだから。

「このまま歩いても間に合いそうにないし、変身しよっか。」
「え? だって私は変身できないよ。だ、だからといって置いていくなんて言わないでよね!」

 私の言葉に光聖君は苦笑して、「いい策がある」と唇で弧を描く。

「僕が空が乗れるくらいの鳥に変身して、空を背に乗せる。どう?」

 いたって簡単な策……。
 そう思いながら私は顎を引いた。