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Re: ざけんじゃねぇッ!と言う少年と少女の物語(darkness編 ( No.119 )
日時: 2010/08/29 15:42
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第19話「これが、坂条真奈美」


 「何をするって・・・こんな危なっかしい能力をこの世界にあってはならないと思うのよ普通は。・・・だから、戦争を起こして、見事、私たちが政府に勝てたら、全国、全世界に真実を言い放ち、この世界を”更生”しようとしているだけよ。・・・なにか悪い事かしら?・・・私は今の世界が怖いわ。・・・だから治すのよ。」

 真奈美はもうろうしている意識を脳に集中させる。絶対に、意識不明にならないように気をつけながら。

 「私ね・・・この能力を持った時、正直恐ろしかったわ。・・・こんな人を殺す事も出来る能力が。・・・凄く怖くて、怯えて、いつか大切な人も殺してしまうのではないか?・・・そう、思ったの。・・・だからこの能力を創った奴を見つけ出して、葬ってやるのよ。」

 真奈美は凄い目つきで田名中を見た。

 「それで、暴力団に加入して、世界を元の位置に戻そうと?」

 田名中も、凄い目つきで真奈美を睨みつける。

 「・・・ねぇ、だからあなたも仲間にはならない?こんな世界を壊して、国家を私たちが取り、新たな世界を創るの!・・・ねぇ、なりましょうよ!・・・今の私なら、大歓迎であなたを招待するわ!!」

 田名中の言葉は、能力者なら絶対に疑問に思う事かもしれない。
 この世界の能力者で喧嘩をした者なら、一度は必ず考える事がある。
 どうすれば、自分の力を使って相手を上手く傷つけられるか。
 それはどの程度のダメージを与えるものか。
 痛いか。苦しいか。壊せるか。止められるか。なぎ倒せるか。吹き飛ばせるか。
 そして全部終わった後で、ふと寒気に襲われるのだ。
 そもそも自分はどうしてそんなものを持っているのだろう、と。
 だから田名中光は言う。
 本当に、あの時寒気は覚えなければいけなかったのか、と。
 その疑問を後ろ盾にして、暴力団に入り、すべてを終わらせようと。

 真奈美は歯を食いしばり、・・・そして。



 「そんなもの、断固お断りですよ」

 真奈美は、左腕に力を入れて、立ち上がろうと足から腰まで、全力を注ぐ。

 「これだけの事態を起こしておいてどんな言い草が出るかと思えば、所詮それだけですか。やはり暴力団なんて、言う事が小さいですね。」

 「・・・なんですって・・・?」

 「当たり前の事にいちいち反応しないでください。そんな自分に酔っぱらった台詞で、私を丸めこめるとでも思ったんですか?・・・大体、能力? 本体? 実験体? ハッ、 今更それが何なんですか?たとえ今から貴方達の行動により、どれほどの可能性が出てきたところで、すでに私たちが”能力者になっている事”に何の変化があるんですか?・・・って言ってるんですよ、坂条真奈美は。」

 田名中はあまりの発言に、困惑する。だから、彼女は反論できない。真奈美は、至って普通の考えから言っただけだ。ただ、”普通”の考えで。

 「能力が人を傷つける、なんていう言い草がすでに負け犬ですよ。・・・わたしならこの力を使って、害虫の駆除や、祭りなどの火起こしに役立てて見せます。力を存分にふるいたければ、勝手に振るえばいいんですよ。・・・”振るう方向さえ間違えなければ”」

 みしり、と脇腹が悲鳴をあげる。・・・それでも真奈美は田名中の方向へと立ち上がろうと踏ん張る。

 「私から見れば、貴方の寝言なんて屁理屈にもならない! 力が怖い? 傷をつけるから欲しくない? 口ではそう言いながら! 人にこんな怪我を負わせたのはどこの馬鹿ですか!? 自分たちの行いが正しいかどうか知りたければ私の傷を見てください! これがその答えです!!」

 ぐらぐらと、真奈美の足はふらつく。その状態でも制服の隙間から体の至る所、シャーペンで刺さったところを見せ付ける。

 「危険な能力を持っていれば、危険に思われると本気で信じているんですか? 大切な能力を持っていれば、大切に扱われると真剣に考えているんですか?馬鹿ですよ貴方は!! そんな楽な方法でいろんな人々が今の場所を立っていられるなんて思ってんじゃない! みんな努力して、頑張って、自分の持てる力で何ができるのか必死に考えて行動して! それを認めてもらってようやく居場所を作れるんですよ!」

 真奈美は田名中の制服の襟もとを掴む。だが、力が入らないため、あげることは出来ない。掴めてやっとな状態だ。

 「結局貴方の言い草は、自分が特別な才能を持つ能力者で周りは凡俗なんていう、見下し精神丸出しの汚い逃げでしかありません! 今からその腐った根性を叩き直します! この凡俗なわたしに殴られて、存分に自分の凡俗ぶりを自覚して下さい!」


 「さっさと、歯ぁ食いしばれぇぇえぇッッ!!」


 これが、彼女の言葉だった。が、それを合図に真奈美は意識が飛ぶ。彼女の限界があったからではない。田名中光が、腹をぶん殴ったのだ。真奈美が殴ろうとした隙を見て、満面な笑みで殴った。




 「うるっせぇんだよッ!、”糞ガキ”がッ!!」

 「あ・・・ぁ・・・」


 田名中は、倒れ込んだ真奈美をもう一度蹴り上げると、真奈美を無視して、イライラした歩きでその場から消えた。


 (・・・あ、はは・・何を言っても・・・こうなるん、・・・だよなぁ・・・)


 そして、真奈美の意識もそこで完全に途絶えた。