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Re: ざけんじゃねぇッ!と言う少年と少女の物語(darkness編 ( No.147 )
日時: 2010/09/17 08:40
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第21話

 「ぶん殴って、ぶん殴って」
 尾崎の発した言葉を合図に尾崎は山陀に殴り続ける。顔面、腹、両肩、鎖骨部分、胸、それらをすべて隙を見つければ殴り、空いている片手で殴り返す。

 その回数と、共に殴られる山陀の呻き声を何度も発する。足場がふらつき、崩れる事も許されない。

 山陀から見ればその足さえも左足だけしか存在はしていない。右足のふくらはぎより下は固体を保てず、黒い砂となってその地面に降り注がれている。

 (くそ・・・殴られっぱなしじゃぁいけぇねぇ。・・・俺の時間も・・・あと少し・・・仕方ネェょよぉなぁ?)
 尾崎も殴るたびに疲労はしていく。先ほどから無駄に大振りしてから殴るようになってきている。ならば、山陀だったらどう思うだろうか? 簡単な事だ、”その隙間”を見つける事を最優先とするだろう。
 「・・・にげってんじゃねぇぞ、この、、、野郎!」
 そのアクセント前の発した言葉の間が、山陀の最優先執行のチャンスだ。
 尾崎が殴りかかろうとした瞬間に、空振りをする。
 「な?! どこに?」
 それはあっという間と言っても過言ではないだろう。尾崎が左右前後振り向けても山陀の人影もなければ、姿もない。
 「どういう、・・・・?!」
 左右前後であっても、斜め視点から探せばどうなのだろうか? その考えが脳にたどり着いたのと一緒で、壁と壁の隙間を見つけるように斜めへ振り向かえると、長く伸びた人影が、その隙間に吸い込まれるように消えていくのを目撃する。

 「クソ、逃げんな!」
 目撃した方向へと真っ直ぐ走り向く。尾崎は、そこから単独行動に移る。


 それを見ていた奈津美も、尾崎を追いかけるように走る。だが、その瞳には、尾崎が帰っていたことへの歓喜の涙を流している。
 流したくない気持ちもあるが、今の尾崎なら振り向かえる事はないと承知の上、その間にたくさん流す。もう一度、集中して戦えるように。



 「はぁ、はぁ、はぁ、」
 田名中光は、テレポートして隠れた場所に、中山と二人でいる。ここは地下トンネルの非常口の中だ。その場所に、息切れするような息が聞こえたため、警戒心を抱き、入口を見つめ、田名中は近寄る。

 歩く音と、息切れする音が合わされ、徐々に非常口に近寄っている事が把握できる。

 やがて、扉は開いた。

 そこにいたのは・・・。

 「な〜んだ、ボスかよぉ・・・あはは、なんでそんなボロボロなのかわっかんねぇけどぉ、まぁ、無事でよかった良かった。」
 「・・・・・」

 田名中は唖然とする。中に入ってきた山陀の右足がほぼなくなっている事に。その直射したことに気付いたのか、山陀は睨みつくように田名中を見つめる。

 「・・・な、なんだよ?」
 「・・・お前も見てる通り、俺には・・・・時間がねぇンだぁよぉ。・・・・俺の能力には・・・もうひとつ回復系として持っているスキルがある事を・・・お前はしってるよぉなぁ?」
 「・・・っなに、言ってんだよ! もうやめようぜ! 私らには無理なんだよ! 世界を構成するなんてことは!!・・・・こんな———ッ!?」

 即座に、山陀の左腕は、田名中を捉えた。
 話を終える前に、田名中はコンクリートの地床に倒れる。それはゆっくりで・・・とてもゆっくりで。

 「・・・・くくくっ! 結局こうなる羽目になんだよぉなぁ。おめぇら残しておいて助かった。ハハハッ!」
 「もう一つのスキル・・・」

 中山には、今の光景を差し置いて、スキルの事を考える。もう死んでしまった田名中が倒れているが、今は自分を守らなくてはいけない事に警戒心を強度する。
 中山にもそれは理解していた。山陀のもう一つのスキル。能力の中には、一つだけの攻撃タイプと、回復タイプが交える事がある。だから知っていた。その両方を持った、能力者である事を。そして、その回復するために行われる事を。

 山陀は死んだ田名中を脇腹を蹴り上げ、仰向けにさせると、口の周りによだれを垂らし、こう言った。

 「・・・いただくぜぇ?」

 その言葉を合図に、オオカミが肉を喰い破るように、山陀は背を低くし、田名中の体に噛みついた。