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- Re: ざけんじゃねぇッ!と言う少年と少女の物語(darkness編 ( No.154 )
- 日時: 2010/09/18 17:10
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第21話
「がぁ・・・ぁああああァアアアア!!!」
山陀は目標を定めず、ただ攻撃を繰り返す。左腕を無差別に振り上げ、時には横、時には縦。四方八方に振り回す。当てようとは思わない。当たらせようとも思わない。ただ、当てたい。
そんなちっぽけな気持ちで戦う。理由はあった。こんな戦闘より勝る理由。
今の段階で彼は、捕食できない事に、それだけに怒りが増加する。あてずっぽうでもいい。とにかく捕食だけしたい感情に飲み込まれる。
それこそが、彼が二人の戦闘に対する面倒くさいと感じている証拠だ。こんな事、さっさと終わらせて、仲間の怯える顔が見たい。・・・ただそれだけ。
尾崎が敵の山陀の両目の焦点が合っていないと気付くと、気に掛けた事を先に投げかける。
「お前、どこ見て戦ってんだ?!」
「くくくッ! くくくっ!俺は・・・戦ってる暇がないんだよぉ・・・邪魔なんだよぉ!! 消えろォォオオ!!」
いきなりのあてずっぽうではなく的確に尾崎に向けて左腕を振り回したため、奈津美が回避できない尾崎の援護として、ドリル形態の風を二発を秒速一秒の速さで突撃する。
突撃の音と共に、左腕の骨が折れるような音が響く。その激痛に山陀は咆哮する。
「ぐぁアぁぁああァアアああああああああッ!!」
やがて、彼の両目は赤色へと光を放ち、筋肉に力を入れ、その膨張により浮き出た血管が破裂し出血をした事を気にもせずに渾身の力で尾崎を狙う。
だが、ここもやはり奈津美の専売特許だった。同じように二発の風を突撃させる。
「なめぇんなぁぁあああ!」
その風は跳ね返され、奈津美へと向きを変えれば、それを標的として突撃する。
「奈津美!!」と、尾崎はその攻撃を奈津美に伝えたが、伝えた本人は笑って答える。
「・・・平気よ!」
まるでこうなる事も想定内だったかのように、両手を突きだすと、二発の風はもう一度山陀へと向き直り、突撃する。その一瞬の反撃に山陀の左腕は、防ぎに追い付かず、真正面から衝撃とダメージを喰らう。
「ぐっ・・・・バァァッ!!」
ダメージによる肺に溜まった血を吐き捨て、地上へと落下する。その衝撃も加えられ、歯を食いしばる。
それが尾崎の言っていたチャンスだ。
ダメージに堪えるように見動きが出来ない山陀を確認すると、尾崎はとっさに山陀の左腕の前に付き、迷い悩む。
「くそ、触れば俺が死ぬし、だからと言って触らないわけにもいかない」
寿命中断される方が早いか、それとも左腕を消す方が早いか。両者に別れる。
「・・・尾崎・・・」
奈津美も動揺を隠しきれない。どちらが早いのかの一行勝負。その事に戸惑いと不安が二人を包む。
(でも、痛みがひけば・・・こいつは動いてしまう。時間も空くのがもったいない!どうすれ・・・———ッ?!)
そのとっさの考えに奈津美は気付く。
とても簡単だったがために気付けなかった事に。
(だったら、こいつの意識を飛ばして寿命中断させなければいいわけじゃない! 確か、能力は人の意思でしか使えない。”どんなに強力”であろうと)
奈津美は、考えを直すと、薄く笑みをする。
「・・・尾崎、ちょっとどいてなさい」
「・・・え?」
疑問に思う尾崎を差し置いて、山陀の左腕の前に近づくと尾崎に伝える。
「安全な方法よ・・・100%って訳じゃないんだけどね。」
そういうと、奈津美は右手の人差指に風を巻き起こした。