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- Re: ざけんじゃねぇッ!と言う少年と少女の物語(darkness編 ( No.155 )
- 日時: 2010/09/19 12:10
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第21話
人指し指に風を巻き起こすと、奈津美は尾崎に向けてこう断言する。
「あのドラゴンとの戦いのときと同じ事すればいいって訳。」
「!」
それには尾崎も納得がいく。それを奈津美は確認すると人差し指に作った風を、山陀の頭の上まで誘導させる。
共に、それを合図に風を振動させ、脳内部へと精神意識の中断を実行する。
「ぐ、ァアアっ、やめろ! 俺は、おれはマダァァ!!」
「うるさい! ここまで大勢の人々を無条件に殺して謝罪で許されると思うな! しっかりと罰を受けて、自分の罪を自覚しなさい!」
奈津美は怒りの形相をし、山陀の抵抗に負けないように怒号を放ち、風の力をあげていく。
(たくさんの人を殺して、たくさんの人に迷惑かけて、まだ逃亡するっての? ざけんじゃないわよ!)
倍に倍にと、摩擦力を無くし、振動を繰り返す。この行為は、脳しんとうさせるためだ。ただ、物理的にではなく、脳に振動を遅らせ、風の振動に意識させるという医療システム。
そこを貫き通す意思で奈津美は風の振動を起こし、山陀への脳を脳しんとうすることに成功する。
「・・・うし、・・・終わった。」
「あとは、俺にまかせろ」
尾崎は、意識が途絶えた山陀を確認すると、恐る恐る左腕に触り、確かめる。
特に変化はない。即座に能力の存在を”無”に実行開始。
それだけで尾崎の役目は終わりだと本人自身も思っていたが、それは甘かった。
「っな! ァァアアッ!」
いきなりの悲鳴に奈津美は尾崎の近くによると、尾崎の体内から汗があり得ない速度で吹き出ている事が分かる。顔や服に汗が染みて、水を浴びたように濡れていく。これが人間の汗だとは考えられないほどに。水だとしか考えられないほどに濡れていく。だが、体内から汗が出ている事は事実。
尾崎の額の汗が鼻の先に伝い、息切れするたびに地面に滴る。
(くそ、急に、体力が吸い取られてるッ・・・なんだこりゃッ!)
「・・・尾崎!」
「くっそぉ、・・・体が・・・バテちまってる!・・・くぅ!」
奈津美は、今初めて理解する。”尾崎はまだレベル2の低能力者のため、能力を消すことは多大な体力を使う事”に。これ以上続ければ、死に達する可能性もある。
(我ながらなんて失態よ、能力を消すことだけばっか考えて。それも未だ低能力者の尾崎に。私自身が、能力に恐れていたら、これからなんて戦っていけない!ほんと、馬鹿だったっつの)
奈津美は決心すると、汗だらけの尾崎を抱きかかえ、山陀から離れさせる。触った時に実感したが、高熱を拭きだしていると理解した。奈津美は心の中で舌打ちすると、自分の甘さを踏まえて考える。
(次は、山陀の逮捕)
隣にいる山陀の形態変化していない右手を掴み、ポケットから取り出した手錠を掛ける。
いつ意識が戻ってきて襲いかかるかどうかの不安はあるが、それを絶対に表に出さないように、意識を集中し、反対のポケットから携帯を取り出すと、ポリス・スタデントの長本部へ通信をする。
ピピッ
「はい、ポリス・スタデント本部です。ダークネス暴力団員を逮捕作業中ですが、未だだれも捕獲はしていません。あなたの要件は?」
「ええ、その事なんだけど。坂条奈津美です。そのダークネス暴力団員の”リーダー、山陀殺雄”を、今現在、5時10分に逮捕しました。連行をお願いします」
「・・・・、さすがレベル8ね。わかったわ。今、ポリスカーを向かわせる。ったく、あーぁ、いいところ持ってかれたわ〜、」
「ええ、ありがとう、って、あんたもレベル8でしょ? 凪野 愛奈。」
「・・・そうだけどね〜、力の序列じゃあんたが二位だし。あたしは三位だしね〜、はぁ・・・じゃ、まかせたわ」
「・・・うん、有難う」
奈津美は携帯を閉じると山陀がまだ意識が回復していない事を安堵をしながらこう思う。
(尾崎の手当て。そして山陀の逮捕。まだまだ大変ね)と。
彼女は消えそうな夕日を見つめ続けた。