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Re: ざけんじゃねぇッ!と言う少年と少女の物語(夏休み編 ( No.167 )
日時: 2010/09/24 17:35
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第22話

 「えっと・・・何を言っているのですか?」
 「〜〜〜〜ッ!! だから、一緒にプール行こうって言ってんのよ!」
 「・・・俺と?」
 奈津美は大きく頷く。反面の尾崎は夢でも見ているのだろうかと上の空状態に落ちる。そこを見つけた奈津美はもう一度聞いた。タクシーの運転手が赤面している事も知らずに。実の事を言えば、タクシーの運転手の思いはこうだ。
 (二人でプールデートぉぉおぉ?!)
 これは、赤面せずにはいられないだろう。

 「あの〜、奈津美。俺とお前は性別が違うよな。って事はだ。周りからどのように思われるのかの”リスク”を考えた事あんのか?」
 「・・・(だからだから、分かってるわよ! 分かってるからこそなのに! 開けよ口〜〜!!)」
 「見るからに考えてないか・・・よし、お前も何人かの友達を連れてきて、俺も連れてくればいいかもな。うん、そうしよう。そうすれば疑いも気遣いも何もなく楽しめるしな」
 「えっと、えっと! えー・・・・」
(勝手に決めんなーーーッ!!)
「・・・そ、そうね! そうすれば私達がカップルになんて見られるわけないわよね・・・・」
奈津美は炎に燃えていた瞳を覚めさせながら、“嘘”の返事でごまかした。ゆっくりと、落ち込んでいる事に気付かないように彼女は胸の中で呟いた。
(どうして素直になれないのよ・・・)

「よし、じゃあ明日どこで集合すればいいんだ?」
「・・・駅前の切符売り場に、朝9時に集合すればいいわ」
尾崎は頷くと奈津美へと振り向いている顔を変え、窓側へと向いた。すると、携帯を取り出し、メールを打ち始める。奈津美から見れば、明日の連れてくる友人だろうと予測する。
(・・・二人で一緒に行きたかったのに・・・なんで素直じゃないのよわたしは)
奈津美は大きく、自分の正直に出来ない所を悔やんだ。その裏面、明日連れて行かなければいけない友人を想定しておくとする。
(まずはやっぱ・・・凪野よね。レベル8だけど、尾崎なら許してくれるはずだし。はぁ〜、こんなはずじゃなかったのに〜)

やがてタクシーが二人が住んでいるマンションの前に到着すると、尾崎は後部座席から降り、ドアに手を掛けた。そこをなんとか奈津美は呼びとめる。
 「ちょっと待って。・・・明日、来てくれるんでしょうね?」
 「ああ、絶対行くよ。退院そうそうだけど、近頃無駄に事件ばっか加わって遊んでなかったしさ。」
 「・・・、分かったわ。じゃ、先行って・・・」
 「おう!」と、尾崎は返事すると、支払いを済ませてまっすぐ自分の部屋へと帰った。
 奈津美はその背景を見ながら思った。
 (やっぱり、私って・・・尾崎の事・・・)
 奈津美は幻をすべてかき消すように首を左右に大きく振り回すと、赤面した頬を両手で押さえて確認する。
 (違うに、決まってる。だってあいつは、私のただの幼馴染なだけで、そういう関係になるわけが———ッ)
 彼女があれよあれよと考え込んでしまう内に、タクシー運転手が(な〜んだ、恋人同士じゃないのか)という感情を思いながら伺った。
 「君、ここで降りるんじゃないの?」
 「ふぇっ?!」
 突如の質問に混乱しながら、両手を握りしめると、震えながら言う。

 「お、降ります降ります! 有難うございました!」
 慌てて降り、奈津美もまっすぐに自分の部屋へと戻る。

 今の彼女には、尾崎への想いが爆発しそうになり、全身が痺れで支配している。彼女はもう、明日のプールの事だけで頭がいっぱいになった。