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Re: ざけんじゃねぇよ! 〜final story〜 ( No.245 )
日時: 2011/04/30 22:30
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

一篇「主人公の終局」#03

 俺はとにかく隠れる事を優先にする。見つかったら接近戦の俺じゃ歯が悪い。まずは相手をこっちに引きつけてそこで倒す。

 倒し方にもよるが、こんな所でいちいち能力なんて使ってたら最後の最後で使えなくなる。だからなるべく能力は使わずに素手で倒す。
 倒すのにも時間が掛かるから、意識を失わせた方が早いか。

 7階の部屋の扉と扉の隙間にある廊下を進みながら、足音をたてないように走る。
 普通のルームがサイドにある廊下を渡ったらすぐバレてしまう。

 焦らず、落ち着いて行動した方が。

 (この戦いでは勝ちに繋がるな……)

 やがてなるべく奥に進んだ所で、7階の非常口の扉が開く音と閉まる音が響いた。
 やはり、心拍数が上がる。銃でも撃たれたりしたら、などと考えるとさらに口から心臓が吐き出しそうになるほどの吐き気が催す。

 (くそ、やっぱ怖ぇ。怖ぇよ。まさか一人で戦う事がこんなに緊張と緊迫感が迫ってくるものだとは……だけど、曲げねぇ! やるっつったらとことんやってやる!)

 尾崎は手の中にある物を握りつぶすかのように握り、震えを途絶えさせる。そして目つきを鋭い眼光に輝かせ、まっすぐな戦いに挑む。

 俺が今いるのは、真ん中の廊下から出て、部屋の壁角にある窓辺にいる。
 そして奴らは今、真ん中の廊下を歩いているだろう。

 念のため、壁角から少し顔を出し真ん中の廊下を見る。なお、見つからないように本当に数ミリの視界だ。しゃがんで、武装部隊の足だけを見るように覗く。

 結果は、想像通り、数は少ないが三人がこちらに向かって歩いていた。
 よって、次の行動の選択肢が決まった。
 (———このまま、突っ込む!)

 息が乱れる。整えるため、二度深呼吸をする。
 「すー、はぁー……すー、はぁーー……————ぐっ!」
 一気に息をのみ込み、真ん中の廊下へと突っ走る。

 「ぅぉおぉォォオオァァアアアッッ!!」



 「「「———ッ!?」」」

 さすがに三人の武装部隊員も驚いたのか、突然の正面突破にどうすればいいのか頭が追い付かず、そのまま先方にいた一人が、尾崎の拳によって顔面を叩きつけられる。

 「ぐ、ぐぁぁああッ!!?」

 (うぅ、うぇええッや、ヤベェ! マジでイテぇ!!)と、拳を叩きつけた尾崎も奥歯を噛みしめる。

 殴られた側も半ば悲鳴を上げて、ヘルメットからの衝撃によってきたダメージを鼻に多少ヒビが入るほど喰らい、まっすぐ一回バウンドして壁に頭をぶつけ、気を失う。

 殴った尾崎もさらに拳に痛みが倍増していき、涙が流れそうになったが、そうも言ってられない。

 堪えて、後二人を殴り飛ばさねぇと、応援が来て取り押さえられることになってしまう。

 だから拳を引かず、ただひたすらに次の奴の顔面を狙うために殴りつける。
 「うぉおりゃぁぁァアッ!!」

 ガツンッ!!、とヘルメットの凹んだ音と、尾崎の拳がぶつかった派手な音が響き、またもや倒れたのは黒いヘルメットを付けた方だった。

 ヘルメットが凹んだせいで、鼻にヒビが入るどころか、折れてしまったのだろう、殴られた次にヘルメットを凹ませたまま倒れた武装隊員が7階全域に響き渡るほどの絶叫を口から放った。

 「うぐ、うぐぁああああァアアアアアアアアッ!!!」

 だが、尾崎は心を鬼にする。

 ここで止まるわけには行かないんだ。どんなに残酷だろうと、俺は。

 殴られた武装隊員の絶叫と悲鳴に動揺せず、残り一人を片付けるために赤く腫れて赤い液体を垂れさせている拳をまた握りこみ、最後の一人の顔面へと殴りつける。

 「うあ、ぁあッ!!—————ぐばぁッ!!」

 喉から込み上げてきた悲鳴を少し発した武装隊員に最初と最後の拳を顔面の下あたり、つまり顎に当たる感覚で下から上へと振り上げ、アッパーを喰らわせる。

 アッパーを喰らった武装隊員の一人はそれ以上動かず、気を失い体を壁に預かせている状態になっていた。残りの二人も、同様の状態でなんの反応も示さなかった。

 そうやって一つ一つ確認していくと、突然拳からの激痛がよみがえり、そのまま地面へと転がる姿勢になってしまう。

 「っく、うぅ……くそ! 最後の一人くらい、能力使うべきだったか!?」

 息を乱しながら、そう言い放つ。

 汗が湧きあがり、呼吸が乱れるほどの異常な心拍数が来る。
 緊張が途切れて、緊張していた分の動悸が起こって来た。

 「はぁっ……はぁっ! く、っそ……マジでシャレにならねぇって!」

 (こ、こうたお疲れ。でも、まだ休んでられない見たい。今度は能力を使おう。もう拳は……)

 ポタコンがそこから何も言わなくなったので、激痛どころか痛みを超えて麻痺した拳に目を向ける。

 至る所が痣になっており、液体が乾いたおかげで赤い手になっていた。こぶしの骨も、赤く腫れている。

 「休まねぇと、これ以上は……身が持たねぇ……」

 ただ激痛に耐えるために奥歯を噛みしめ、言葉を一つずつ漏らす。
 もう殴って使った手だけではなく、体全身が熱いくらいに体温が上昇している。

 ポタコンも、休ませる事を優先にしたのか、それ以上はもう何も言わなくなった。

 少しの沈黙した時間が進むが、ひとつの音によってそれはかっ消される。

 もう一つのチームであろう所から、こちらに倒れているヘルメットの無線に応答信号が届いたのだ。そして、こう言い伝える。

 『B班、どうした? ふむ。応答がないな。仕方がない。尾崎浩太、そしてサポーター・コンビネーションに告ぐ。いるのだろう? 今から全隊員をそっちに向かわせる。逃げ切れると思えるのなら逃げてみろ。我々は全勢力を持ってそちらに向かう。怯えて降参してもいいんだからな? 白旗を上げて無様に捕まるのもこちらとしても滑稽で嬉しい。だが、できるだけ逃げてくれ。我々は近頃ヒマでヒマでつまらなかったからな』

 後にプツッ、と音は切れた。