コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

どうやら僕は異世界に来てしまったようです。 1-1 ( No.1 )
日時: 2010/07/31 21:37
名前: 村人A ◆UcTzrn55Fk (ID: mZiC8SdU)


どうやら僕は異世界に来てしまったようです。 1-1




 今日も今日とてお天道様は元気なようで、遠慮なく太陽光を降り注いでいやがります。壁に掛けてあるデジタル温度計を見てみると、ディスプレイには36度という文字が表示されていて……うん、やっぱちょっと張り切りすぎじゃないでしょうかお天道様。少しは手を抜いてもバチは当たらないと思うんです。

 ほら、外を見てみるとあまりにもの蒸し暑さに顔を歪ませながら歩いている一組の家族がいるじゃないか。姿格好から見るとこのコンビニの先にある大型水上アミューズメントパークにでも行くのだろうけど、お父さん一人で家族全 員分の荷物を持ってるよ。

 そんな息を荒くして荷物を抱えているお父さんの隣には、それはそれは可愛らしい幼じ……ゲフン! 娘さんが赤色のリボンがついた麦藁帽子をいじりながら、これから起こるであろう楽しい時間に期待をよせてニコニコと満面の笑み浮かべていた。

 その娘さんの様子を微笑ましく見守っているのは二人よりも少し後方にいる奥さん。歳は外見上30前半のようだが余裕ある雰囲気とそれとはうって変わって娘さんとお揃いの麦藁帽子に、白をベースとした控えめな柄が入っているフリル付キャミソールとショートデニムパンツという、少し若々しい服装をしている。

  ……うむ、実にグットだ。既婚者じゃなければ是非ともお近付になりたい。いや、既婚者でもお近付にはなりたいが……ああ、急にあのお父さんに対して怒りが込み上げてきたぞ。最初は同情していたが、もはや同情なんてものはこれっぽっちもないわ! フハハ! せいぜい苦しむがいい! そして……いつまでも幸せになコンチクショォォォ!!



「さっきから何ブツブツと言っているんだお前は」



「ふでば!?」



「真面目に仕事しろ。後輩は後少しで上がりだろ?」



 突然頭に走った痛みに声を上げて振りむくと、肩まで伸びた染めの知らない艶のある黒髪に、前髪からのぞかせるキリッとした目つき。整った鼻や口といったパーツがバランス良く小さな顔の中へと納まっていて、綺麗な顔立ちをしている。背は僕と比べて少し小さいが、170cm以上はあるだろう。体系は陸上部に所属していることからスレンダーだが、いい意味で出るところはしっかりと出ていて、そんな容姿体系共にまさしく美女と呼べる女性こと先輩は、フライドチキンを追加しながら呆れ顔でこちらを見ていた。



「そ、そうなんですけど、なんていうんですかね、ほら、運動部風にいうとダウンですよ。クールダウン」



「ここは運動部でも学校でもないんだぞ?」



 そう言って入店してきた男性客に営業スマイルを浮かべながら「いらっしゃいませ」と挨拶をかける先輩。ああ、あの男性客、頬なんか染めちゃってるよ。

 確かに外見上だけを見れば先輩は見入ってしまう程に綺麗な容姿をしているが、大抵そういったものにはトゲがあるもので、告白してきた男性を生理的に受けつけないという理由で、顔面整形だ! と高笑いをしながらボコボコにしたり、高校時代の時に気に入らない教師がいれば、教師の恥ずかしい性癖を学校新聞へ載せるという公開処刑まがいなものや、その他にも数々の伝説、というよりも事件沙汰を知れば、百年の恋も一瞬にして冷めるだろう。

 現にこの僕もその被害者の一人で、現実を知ったその日は一日中枕を涙で濡らしましたとも!



「お前が真面目にやらなければ私が楽できないだろうが」



 外見は二重丸。内面は落第点のギャップ萌えも狙えない程の先輩は「まったく。もう、まったく」とブツブツ言いながら先ほどまでと同じようにある方向へと目を向けた。