コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- どうやら僕は異世界に来てしまったようです。 3-2 ( No.17 )
- 日時: 2010/08/13 00:43
- 名前: 村人A ◆UcTzrn55Fk (ID: Na535wgJ)
どうやら僕は異世界に来てしまったようです。 3-2
ナデナデ。ナデナデ。
「………♪」
ナデナデ。ナデナ——。
「………?」
「あの、もう、いいかな、撫でるの」
「…………」
「う、腕が疲れちゃって……」
「…………」
「……はい。喜んで続けさせていただきます」
「♪」
もう何回目かとなる彼女、アイシャとの攻防は、再び僕の敗北で終わった。あれから、どうも彼女は頭を撫でられることを気に入ったのか、こうしてずっと僕に頭を撫でさせている。やめようにも無言の拒否をくらい、仕方がなく撫で続けるしかないわけで……。
——ああ、明日、完全に筋肉痛ですよ。二の腕がプルプル痙攣してるし。
自分の筋肉痛で苦しむ姿に小さく溜息を吐きつつ、僕は部屋の中を見渡した。
自分の部屋とは違い、全体が木をベースにして作られた部屋からはほのかなに木の香りを漂わせ、部屋の内装はこのベットと小さなタンスに、部屋中央には丸いテーブルが設置してある。良く言えば清楚、悪く言えば、どこか寂しさを感じる部屋だ。
「この部屋って、アイシャの部屋?」
「……シア」
なるほど。シアっていう人の部屋なのだろう。シアというのは、アイシャもそうだが、名前からして、外人さんか?
ん? というか、アイシャって見た目は外人の容姿をしているけど、悠長な日本語を話しているな。
「ところで、アイシャって、ハーフなの?」
「……」
少しの沈黙後、コクリと頷くアイシャ。
「ああー、やっぱりそうなのか。日本語がこんなにうまかった「魔人と……人間の、ハーフ」か、ら…………。ごめん。もう一度お願い。ぱーどぅん?」
「……。魔人と人間のハーフ」
……オーケイ。オーケイ。落ち着こうじゃないか僕。彼女は何て言った? まじん、マジン、魔人?
なに、そのよくゲームで聞きなれている言葉は。あ、ああ、そうか。もしかして彼女は、外人のことをなんらかの事で勘違いして、魔人と言っているに違いない。うん、そうだ。よくこの歳にはあることだ。
——スリ、スリ。
「?」
うんうんと頷く僕は、掌から感じるくすぐったいさに目を向けると、アイシャが頭をスリスリと僕の掌に押し付けていた。どうやら撫でる手が止まっていたようだ。
「よしよし」
「ん……」
彼女の魔人という言葉に、本能が気につちゃだめだと告げているので、これ以上は考えないようにしようと決めた僕は、再び彼女の頭を撫でる。
すると、ガチャリと部屋の扉が開いた。反射的に扉の方へと顔を向けると、そこには少女が一人、驚いた表情をして固まるように立っていた。
僕がその少女をどこかで見たことがあるようなと記憶を探っていると、途端、少女は肩を震わせ……なんだろう、雰囲気的に、やばい気がするのは気のせいだろうか。
「……アイシャに。……アイシャに」
俯きぶつぶつとなにかを呟いている少女。
——うん、これ、やばいよ。なにか知らんけど、やばいと僕の本能様がおっしゃっておりますよ!
全身からだらだらと冷や汗を流しつつ、撤退準備を始めようとする僕。だけど、すでにもう、遅かったみたいで——。
「あんたアイシャに何してんのよっ!」
彼女がそう怒鳴った瞬間、いつのまにやら目の前まで迫っている、怒気を含んだ彼女の姿と、右頬になにか食い込む感触を感じると同時に、目の前が再び暗闇へと変わった。