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- 男性Yの異世界譚 2-2 ( No.7 )
- 日時: 2010/07/26 09:21
- 名前: 村人A ◆UcTzrn55Fk (ID: E/MH/oGD)
男性Yの異世界譚 2-2
僕の日常を一言で言うと「平凡」と呼べる日常だった。毎日決められた時間に朝起きて決められた時間に学校へと登校する。
学校でもまた決められた時間割通りの授業を受け、そして決められた時間に終わる。
そんな「決められた」毎日を僕は送っていた。別にそんな日常に嫌気が差すわけでもなく、確かに退屈な日常かも知れないけど、僕にとってはこのぼのぼのとした平和な日常に満足をしていた。だって、ただ毎日決められたことをすれば良いだけのこと。そんな決められたレールをわざわざ外れる必要もないわけで、川の流れに従うように僕は日々を流れていくだけ。ただそれだけだった……。
当然命に関わる事なんてなかったし、交通事故にあわない限りは生きていく中で「絶体絶命」という場面には合わないだろうと思っていた。
そんな事を思っていた僕の眼に写るのは、一人の女性、というべきか、外見からしてまだ少女と呼ばれるであろう女の子が木を背に、尻餅を付きながら震えている姿だった。
少女が怯えた瞳を向けている方へと眼を向けると、そこには、眼を真っ赤に充血させて、鼻先に皺をつくり、鋭い牙を彼女に向けている、一見、熊にも見えるけど、凶暴という言葉を具現化させたような生物が、全身を覆う藍色をした毛並みを逆立てて「ぐるる」と唸り、今にも少女に遅い掛かろうとしている。
僕はこの光景を木の影から見ていたが……まさに「絶対絶命」と言う状況だろう。
あれから走るに走って、悲鳴が聞こえた元へとたどり着いた僕だが、人生そんな甘い事はなく、僕の願いとは反してかなり危険な状況で……。
頭の中に居座る天使と悪魔が「あれに関わると死にますよ? 逃げたほうがいいって!」と両方意見一致で僕に警告をだしている。実際、膝がガクガクと震えて、体に力が入りませんよ。
うん。今更だけど、ほんと、考え無し来たのが失敗だった。 なにあの化け物は? 熊っていうよりもRPGに出てくるモンスターだよ! それに助けるにしたってこのまま素手ではどうしようもないし。何か武器になる物……って、いやいや、実際にあの化け物と戦っても適うわけもないっ。
ここは化け物と戦うのではなく、彼女から僕に標的を変えて、化け物が僕に気を向けている内に彼女が逃げて僕も逃げるという作戦でいこう。
僕は周りに何か投げられる物はないかと探してみると、あの少女の手元の近くに置かれた籠から転がる黄色い楕円状の物を見つけた。
それを拾い上げて、化け物を睨みつける。
未だ化け物は威嚇するだけで動きはないけれど、いつ少女に襲い掛かるかわからない。
——男を見せろ僕!
自分に活を入れ、若干やけになりつつも手に持っていたものを化け物に向けて大きく振りかぶり、投げつけた。
手から離れたそれは、綺麗な円状を描き、化け物へと向かっていく。
そして、鈍い音と共に化け物は外見からそぐわない可愛いらしい泣き声を上げた。
「…………あ」
しばしの沈黙後、まさかのヒットにあたふたとする僕だが、すぐ我にかえり、今のうちにと彼女に逃げるよう、声を張り上げた。
「今のうちに逃げて下さい!」
「っ!?」
そう叫ぶも彼女は今の状況に付いていけないようで、僕と今だもがいている化け物を交互に見ている。僕はそんな彼女の様子に痺れをきらして荒々しい声で叫んだ。
「早く逃げろってっ!!」
その声に少女はビクッと肩を震わせ、僕に向かって一つ頷き、この場から逃げようとする。だけど、地面に付いた腰が上がらないのか、何度も立ち上がろうとするけども、やはりうまく立てないでいた。
「腰が抜けてる!?」