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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 一瞬またたき。 ( No.19 )
- 日時: 2010/08/01 19:28
- 名前: 蒼莉 (ID: ykFYs.DE)
6
夏の日差しをあびて
ながいつばをもつ
麦わら帽子を被って。
私は家の近くの花畑で
花々に止まる虫たちと
格闘している途中だった。
暑い、とは感じなかった。
止まることなく
流れる風が、
私の雪のように白い肌を
すべっていくからだ。
その花畑はそこまで大きくないが
たくさんの花が
茫々と生い茂っていて
手入れはされていないだろう
それぞれの花が
太陽に向かって
綺麗に咲いていた。
「かづーっ!」
遠くの空の下から
聞きなれた
大好きな声が聞こえてきて
私はパアァ、と顔を明るくした。
そして一気に
花々を追い抜かして
風さえも追い抜かすスピードで
その声のもとに
駆けて行った。
「——お母さんっ!」
すぐに母の場所を当てた私は
母の胸の中に飛び込む。
温かなフローラルな母の香りが
私の鼻を擽って
私の頬が
自然と緩まっているのを
私は知らなかった。
「——、かづ、
落ち着いて聞いてね」
ふと真面目な声音が
私の小さな頭の上から
聞こえてきて
私は首を傾けながら
母の視線と自分の視線を合わせた。
「…冬花ちゃんが
家の前で倒れていたらしいの。
近所の方が救急車を呼んでくれたらしいから
かづもお母さんと一緒に
冬花ちゃんも所に行こう」
私はその言葉を耳に入れたとたん、
頭の中で電撃が走ったように
目眩が起きた。
何を言っているのかは
分かっていなかったと思う、
けど、
その事の重要さと
冬花の身に何かが起こった、
ということは
私がしっかりと
理解できていたことだと思う。
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