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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 一瞬またたき。 ( No.2 )
- 日時: 2010/07/28 17:37
- 名前: 蒼莉 (ID: ykFYs.DE)
1.青の世界 blue world
「ふわぁ〜あ」
腰まである黒い髪を
くるくると指であそぶ。
欠伸を何度も繰り返したせいか、
視界がぼやけ、目の縁から
涙が零れおちた。
目の前に広がる青を
私は直視できない。
認めることができないみたいだ、
この青を。この世界を。
「…あんた、誰」
ふと後ろから聞こえてきた深い声に
私は振り返りもせずに答える。
「誰でしょうねえ。空から降ってきた天使、とかロマンチックじゃない?」
後ろから、「は、」と呆れた息が聞こえてきて
私はくすくす笑った。
「嘘よ、私はあなたの姉。」
その言葉は
私の口から発せられたはずなのに
何故か
私と違う人が発している気がした。
世界にフィルターが貼られている。
はっきりとした青が見えない。
うすくぼやけて、白くかすんでいる。
優しいはずの空気なのに
ピリピリと焦がれて
私を追い詰めていた。
「おい、」
深い声が後ろではなくて横から聞こえて、
私はチラリ、と横に視線をずらした。
どうやら私が座っているベンチの隣に
彼が座っているようだった。
…たった数センチの彼との距離。
温かいようであったかくない温もり。
肩と肩が一度、触れた。
「お前、どこ行ってた?」
「…さあね。天国よ」
「……お前な、」
あら、怒った?
私は隣の彼の顔を見ようと、
首を動かす。
すると視界に映った彼の顔は
一瞬ドキ、としてしまうほど
真剣で
…切なそうだった。
「…大丈夫?」
私の口から出た言葉は
水からでる一滴の雫となって、
青に落ちた。
「…なにが?」
彼は眉を深く顰め
横目で私を鋭く見た。
私はそんな彼に怯える様子もせず
もう一度前を向いて
視界に青を映した。
…青は静かに波打って
私の瞳と
私の心を
静かに揺らしている。
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