コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 一瞬またたき。 ( No.23 )
- 日時: 2010/08/07 21:52
- 名前: 蒼莉 (ID: 3lsZJd9S)
- 参照: ぬるぬるの関係を思いついた!
10
望はひとり、教室のドアに重心をかけて
立っていた。
その姿は堂々としていて、
誰もが一瞬は見惚れる。
180あるかないかの身長に
顔というフィールド上、
美しく並びすぎたパーツ
すっ、と伸びた鼻梁に
艶やかな色気のある薄い唇が
フィールドを品よく飾っていた。
——望……
望はいつも、私を向かえにくる。
それに対して何も思いはしないけど
……、なんだろう、この心のざわめき。
「夏月」
優しいテノールが
私を包む。
ほぅ、と囁かれた気になって
私は恥ずかしさに頬を染めた。
「……じゃ」
私は側でボーッとしている
彌其にそう呟くと
何もこれといった表情を浮かべない
望のもとへと向かった。
◇
「弟クン元気なかったよ」
太陽の光が私を射す。
私は眩しさに目を細める。
隣では、望がニコニコしながら
私を見る。
「気持ち悪いわ」
私は望をにらむと
私を優しく見守る青空に
誰にも見つからないように
微笑んだ。
何故だか今、とても気分がよかった。
私の頬を擽る風が
心の中にも、優しく吹いていた。
「気持ち悪いとか言わないでよー。」
「気持ち悪いんだからしょうがないじゃない」
「……だけどさぁ〜…」
いつもダルダルとしゃべる彼に
私は何度うんざりしただろうか。
もうちょっとはっきり喋ってくれ、お願いだから。
そう願ったのも、何回だろうか。
望は、この喋り方同様、
中身はダルダルした男だ。
だから、何を考えているのかもわからない。
ふと見せるまじめで無表情の顔にも
どう反応していいか、わからない。
「…弟クン、元気なかった。
——それに、祈も。」
——ゾクっ
電撃のような寒気が背筋を襲った。
祈、とは彼の最愛の妹だ。
彼は祈のことになると、
いつもこの表情をする。
何もといっていいほどの、
感情を浮かべていない表情を。
——私は知っていた。
彼がそのような表情をするワケを。
「またやったのか」
「…ええ、まあね」
また、やったのか。
何をやったかと言えば、
自殺未遂だ。
私は高校に入ってから、
何度も何度も自ら死のうとする。
私がこの間死のうとしたのは、
祈ちゃんの誕生日。
そして、望の誕生日。
その日、冬花は祈ちゃんとデートをしてた。
…楽しく、楽しく。
そんなときに私が自殺しようとしたことが
冬花の耳に入ったんだろう。
冬花は私を探しにいった。
祈ちゃんを置いて。
祈ちゃんに元気がないのも、
きっと、そのせいだろう。