コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 一瞬またたき。 ( No.35 )
日時: 2010/08/15 19:56
名前: 蒼莉 (ID: s6U4FeBy)
参照: 抹茶がうまい。もう抹茶だけで生きて…はいけない。だって食べ物がない。

13




心にズシン、と乗っかる重み。

俺は”それ”を振り払うことはできない。

抑え込み、…否、

心の奥で風船ガムみたいに”それ”を

膨らまして、こっそり、ぱちん、と、


割る。



 







「きをつけー、れーい」




「「——さよならー」」




いくつもの重なった声が俺の耳を擽る。

俺はその不愉快さに目を細め

誰にも気づかれぬよう小さく、ふぁあ…、と

欠伸をした。


視界が微かにぼやけ、

その原因である目の縁に滲んだ涙を

俺はゴシ、と腕の裾で拭うと

チラチラと自分に向けられる女子達の視線を

わざと無視して、ガガ…、と席をたち

なぜか重い鞄を腕にかけた。


はやく帰ろう、と思い

教室のドアに向かおうとしたとき、



「「きゃーっ」」



という女子達の女々しい黄色い声が

俺の耳に駆けてきて、

まもなく俺の鼓膜の奥のゴールをきった。

俺はその声のもとが隣の俺の姉、夏月の教室

だということに気が付き、

ぴくり、と肩をゆらして反応を示した。

しかし、そこに俺の見開いていた瞳を

さらに見開かせる”台詞”が俺の耳の

ゴールをきった。




「水上クンが南さんを迎えにきた」




そんな、台詞が、

俺の耳のゴールをきって、

俺は強く

強く、拳を握りしめた。



水上 望はその奇妙な程整った顔、そして

甘く垂れた目と人懐こい性格で

女子達から絶大な人気を誇る、

ある意味学校の王子様だ。

まあ、そんな望の双子の妹が俺の彼女だけど。

そんな望は、いつも授業には出ないくせに

放課後になると夏月を迎えにくる。

そんなことをして教師たちがどうしているか?

それは望と祈の父親の仕事を聞けばわかる。

望と祈の父親の仕事は、大手ホテル会社の社長で

社長はこの学校に多額の金を出してるらしく、

望と祈が何をしても校長は良い顔しながら

許してくれる、ヘボなやつだ。

だから、望が授業にでねぇで

……夏月を、迎えにきているだけでも

何も言わねえ、それで留年もなしだ。

なんて腐ってやがる。

——なんて。



望が羨ましい、だなんて

口が裂けても言わねえ。

夏月と血が繋がってなかったら、なんて、

死んでも——