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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 一瞬またたき。 ( No.37 )
- 日時: 2010/08/15 20:18
- 名前: 蒼莉 (ID: s6U4FeBy)
- 参照: 祈ちゃんは君に届けのくるみちゃんの外見に…。
14、
「ふゆちゃん」
『冬花』
ビクン、
大袈裟なほど肩が揺れた。
脳では、この声の主が分かっているはずなのに
心で、その声が昔の夏月と被って聞こえた。
「ふゆちゃん?」
ふわ、と薫るフローラルな香りは
どこか懐かしさを覚えさせた。
あ、母さんの匂いだ。
俺は自然に目を微かに細めた。
「ふゆちゃん」
耳元に囁くように発するその柔らかな声は
だいぶ夏月より高い。
だがハスキーな声ではなくて、
何故か心を落ち着かせるような、
甘い声をしていた。
「…、——祈」
俺は俺の肩を優しく叩く祈の方へ体を向けた。
心配そうに眉を寄せる祈。
赤く化粧で染められた目元が、
兄の垂れ目を真似しているんだな、と
感じさせた。
そんな目元をするり、と通る
ゆるいウェーブがかかったハニーブラウンの
ふわふわな長い髪は、
どこかマシュマロを思い出させた。
す、と通った長い鼻梁、
そしてポッテリとした甘い口元。
こんな可愛い奴が、俺の彼女、
祈 inori だ。
「…ふゆちゃん、大丈夫?」
祈は上目づかいで俺を見あげる。
祈は一般の女子より背が高いが、
俺よりはやっぱり少し低かった。
”ふゆちゃん”とは、祈が決めた俺の呼び名だ。
「……ああ」
俺は微かに口元を緩ませ
祈の頭をポン、と叩いた。
すると祈の顔が少し綻ぶが、
その眉はいまだ寄ったままだ。
…祈は感がいい。
俺が夏月のことでも
考えていると思っているんだろう。
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