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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 一瞬またたき。 ( No.43 )
- 日時: 2010/08/18 22:06
- 名前: 蒼莉 (ID: b1TZiT7s)
17、
「、は、?」
吐息のような声が
自分の口から洩れて。
まだ外にでて数分もたってないのに
変な汗が湧きでて。
知らず知らずの間に
握っていた拳は跡が残ってしまっていて。
とにかく、俺、は。
目の前の女が、望に見えて仕方がなかった。
「だって、いっつもお姉さんのこと
気にしてるんだよ?」
——なんか運命の脈でも
感じてるのかなー?
祈は照れたようにはにかみ、
首を傾ける。
太陽の陽が祈の髪を照らして
ハニーブラウンの髪が
金にすきとおったように見えた。
その姿に俺の視界から、
ぼんやりと祈に被っていた望の姿が
スー、と離れていくのが見えて、
俺は一度、強く、
強く、目を瞑った。
「そんな脈があったら、
世界中のみんな、苦労しないかぁ」
祈は手を口元に上品にあてると
くすくすと笑った。
その姿がやっぱり、ある意味のご令嬢なんだな、
と感じさせた。
けど、その祈の姿を、
俺は夏月の姿と、
…、重ねてた。
「でも」
祈は肩に落ちた自分の長い髪を
スー、と指で流しながら
その言葉を紡ぐ。
けど、
——夏月はそんなことをしない。
夏月は、…夏月、なら。
長く艶やかな黒い髪を
陶器のように白く長い指で
くるくると回すだろう。
「お姉さんはお兄ちゃんのこと」
祈は眩しい陽の光を放っている太陽を
手で目の上を覆いながら見上げて
小声で「暑いわ…」と呟いたあと
その言葉を紡いだ。
けど、
——夏月は、…夏月なら。
眩しい太陽を何のカバーもなしに見上げて
「太陽も大変ね」、って
小声でひっそり太陽の味方をして
俺に笑いかけるんだろう。
「どう思ってるんだろうね。
ふゆちゃん」
祈は、
祈は。
ふゆちゃん、と俺を呼ぶけれど。
夏月は、…夏月だったら。
「冬花」
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