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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ジュブナイル ( No.28 )
- 日時: 2010/08/04 16:58
- 名前: 九蛍 ◆WpSnIpcg.c (ID: cRxReSbI)
プロローグ
0.
始まりはそう、あのときの「憂鬱だ」という一言からである。
1.
逢城小捺(あしろこなつ)の日課は、朝、ある人物の写真を丸々三分間見つめることである。
傍から見れば怪しいことこの上ないし、何よりその写真に映っている人物が小学生そこそこの少年ときた。ショタコンと称されても文句はいえまい。
今日も、写真に写っている少年の表情は変わらない。
ノリでプリクラなんかには入ってみたものの、わけがわからないし何より恥ずかしい。やっぱり出ようというところで引き止められ、そしてやあやあ映ってしまってぎこちなく笑んでいる。
「はぁ……」
憂いを帯びた表情で声をもらす。
もうすぐ、もうすぐプリクラに映っている少年に逢える。
小捺は取り分け成績が悪く、受験戦争に敗れ、すべり止めの私立に入学することとなった。
そして、写真の少年もその私立に入ってくるというではないか。こんな些細なことでも、運命を感じずにはいられない乙女なお年頃の小捺は、そう知ったときは歓喜に泣いた。狂ったように騒いだし、ビートた○しの顔真似をしながらブレイクダンスしないとライフルで眉間に風穴を開けるぞと言われたくらいに、うろたえた。
——そして今日、その彼と逢える。
出席番号は五十音で隣同士になれないことは確定だが、それでもせめて同じクラスになれたらなと小捺は期待した。
あと四十五分で家を出て、自転車をこぎ、そして学校でクラス表を見ればは——ひょっとしたら、本当に彼と同じクラスになれるのではないか、そんな期待をせずにはいられない。
小捺は晴れた空を見て、そしてただなんとなく、考えたところでどうにもならない疑問を浮かべた。
命短し恋せよ乙女とは、一体誰の戯言だろうか、と。
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