コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Random every day!! ( No.12 )
日時: 2010/08/19 18:28
名前: 勿忘草 (ID: TtH9.zpr)



「は?」

それは突然の出来事でした。

「越智、悪いが今年一年、」

目の前にいる先生は、満面の笑み。






「お前は福田の隣の席だ」






 000 不穏な、お願いの様な命令




「は?」
「越智は真面目だからなぁ、奴を任せられる」
「は?」
「まぁ、頼んだよ、」
「いや、あの」

26歳の若い担任教師、森川は上機嫌。
彼を止められる人間なんて、此の世にはいないだろう。

「ちょ、先生、」
「頼んだぞ! 福田を!」

森川はポンっと、郁奈の方を叩く。
郁奈を呆然としながら、頭の中で今の状況を整理した。



1 今日は始業式でした。
  (3年E組になりました)
2 教室に行ってみると、私の周りにクレーターが出来ました。
  (半径1㍍以内に誰も入ってきません)
3 始業式が始まります、なんだか居心地が悪かったです。
  (此処で職員室へと呼び出されました)
4 職員室へ Let's go!!
  (私が何をしたと言うのでしょう)
5 先生は上機嫌で笑っていました。
  (何か企んでいるな、とは思っていましたよ)
6 此処で無理なお願い。
  (・・・・・・、というより、命令?)
7 引き受ければ人生のThe Endまでもカウントダウン開始!!
  (それなのに拒否権は無さそうです)
8 全ての謎が解けました。


あ り え な い




「いやいやいや!!! ナイナイ!! 絶対無い!!」




郁奈は大声を出した。 職員室で。
一斉に、他の先生達の視線が集まる。
森川も、きょとん、とした表情[カオ]をしている。
でも、そんなものはおかまいなし。

「きゅ、急に、どうした?」
「どーしたも、こーしたも!! おかしいでしょ、先生!! 
 私の中学最後の年を、人生最期の年にするつもりですか?!」
「ははははは、」
「笑い事じゃないですよぉ!!! なめてんのか、このアホ!!!」

担任に対して、なんて言葉遣いだろうか。
郁奈は尚も抗議を続ける。

「福田ですよ?!」
「あぁ、そうだ、福田だ」
「その何もかも理解した、みたいな表情ムカツク!!」

郁奈はもう1度、大きく深呼吸。



「“あの”福田、ですよ?!」




そう、福田成夏。
奇麗な明るい茶色に染まった髪に、乱れた制服。
学校遅刻、サボりの常習犯。
授業妨害は当たり前のこと。
そして、それを駆り立てるような、数々の噂。
お世辞にも良い噂とは言えない、数々の噂。
そして、基本的に荒れていない落ち着いた学校・竜南中学校唯一の、不良グループの頭。



———親を階段から突き落とした、とか。
———よその学校に喧嘩売って病院送りにした、とか。
———女子でも容赦なく殴る、とか。




「そんな噂ばっかですよ?! あの人!!」
「そうだなぁ、」
「何で、私なんですか!!!」

半泣き状態で、森川に問いつめる。

「・・・・・・」

森からは黙り、真剣な表情をして見せた。



「お前なら、何とか出来ると思ってな」



「え、」

その表情と言葉に心揺さぶられたのが間違いだった。

「頼む」
「え、え、」

混乱。
郁奈は、混乱していた。

「それじゃ、福田は教室にいる筈だから!」
「え、」

森川は郁奈の背中を押し、追い出すようにして職員室から郁奈を出す。

ピシャリ。

その効果音がぴったりだ。
気がついたときには、郁奈はもう職員室から閉め出されていた。

———やられた。

郁奈は思う。

———なんて馬鹿なんだろう、自分。

3年E組の教室は、職員室前の廊下から丸見えだ。
本当に福田が教室にいるのか気になって、窓から教室の中を見る。

———いな、い・・・・・・?

中に福田の姿が見えないコトを確認すると、郁奈は少しだけ安堵する。
そして、ため息。

「緊張して損した」

独り言でそう呟き、郁奈は歩き始めた。

———頼まれたし、教室に寄るだけ寄って帰ろう。

自分のこれからの行動を頭の中で整理し、足は教室へ向かった。




——————




「森川先生、」

森からと同じくらいの年であろう、長い髪の女教師が、
森川の机にコーヒーカップを置きながら話しかける。

「ん? 何ですか?」
「いえ・・・、彼女には荷が重いですよ、さっきのお話は」

柔らかい物腰で、森川の隣の席に座る。
そこが、彼女の席のようだ。

「そうですか?」
「えぇ、福田くんは随分やんちゃですし・・・ 越智さんは、元気ですけど、真面目な生徒じゃないですか」
「ははは、そうですねぇ。 でも、」

森川は、そこで言葉を切る。

「でも?」
「兼田先生、」
「はい?」



「俺は・・・、越智にしか出来ないと思ったんですよ、クラス名簿見たときから」



それは、自信に満ちていて、何処か楽しげな微笑みだった。




——————




郁奈は教室のトビラを開く。
誰もいない、と確信して。



ましてや、彼、がいるなど、カケラも思わずに。



勢いよく、トビラを開けた。










「———————————————誰?」










奇麗に染まった明るい茶色の髪に、乱れた服装。
日に照らされたその姿は、何処か格好良く見えた。





「え、」






出会ってしまった。




Random every day、





此処から、始まるみたい。