コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Enjoy Club第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』(3) ( No.40 )
- 日時: 2010/08/25 16:48
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: 7hab4OUo)
風音高等学校は、他の学校と比べると珍しいことに屋上の扉が年中開放状態である。もちろんその分フェンスは高く丈夫に作られているが、それにしてもあまり例をみないことだ。
当然以前は昼休みに生徒が集まり、いくつかのグループで昼食を食べる、という光景が見られていたが……それも去年からぷっつりと見られなくなってしまった。
その理由は、ただ1つのことに限る……
「あーちゃん、一緒に食べないの?」
津波の声に、私はバッグを肩にかけて振り返る。
「はい、今日は他のクラスの子と食べてきますね。ごめんです」
私が顔の前で両手の平を合わせると、彼女らはありがたいことにあっさり了承してくれた。
今は12時半。ちょうど昼休みの始まる時間だ。
入学式から1週間が過ぎ、クラス内のグループもだいぶ固定されてきた。私は恵玲と津波、美久、そして数日前教科書を拾ってくれたポニーテールの女の子、幸崎静音の4人と一緒に行動している。そしていつもならこの4人と共にお弁当を広げ、昼休みを過ごすわけだが……
今日は諸事情で別行動をとることとなった。
それは他のクラスの子と食べる……からではない。皆には本当に申し訳ないが、それはあくまで口実だ。
私は今からある噂を頼りに、屋上へと向かうところなのだ。
「——つきました」
重々しい金属の扉に片手を当て、ふぅと息をつく。手からひんやりとした冷気が伝わってくる。さっきまで耳に響いていた昼休み独特の喧騒も、この空間では一切存在を消している。不気味な、静寂だった。
私は目を閉じて深呼吸をし、扉を開けようと手をかけ——
力を入れる前に、手を離した。
激しく鼓動を繰り返す胸に手を当て、震えるようなため息をつく。
——……さっきまで全然平気でしたのに……
それから数十秒。
私は睨むように扉を見つめ、今度こそ重い扉を、開いた。
緊張でわずかにうるんだ瞳に、予想通り、紫苑風也の姿が飛び込んできた——