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Enjoy Club 第8話『友を取り巻くモノ2』(4) ( No.914 )
日時: 2011/03/27 11:20
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: st6mEGje)

 今の下橋には全部で3つのグループがある。1つは、風也率いる下橋で最もケンカの強いグループ、“緋桜”。功達もこのグループのメンバーで、小学生から大学生まで全部で15人のメンバーが所属している。残り2つのグループ、“白虎”と“光刃”も同じような構成だ。

 それぞれのグループには、しばしばトップと呼ばれるリーダーとサブリーダーがいて、“緋桜”でいうと風也と功がそれに当たる。他のグループにもそれぞれ2人ずついるのだが、全体で最も強いグループのリーダーが下橋全体のリーダーも兼ねることになり、現在その位置には風也がゆるぎないものとして存在している。またそれぞれのグループにはトップ3、トップ5という呼び名があり、それはそのグループ内でケンカの強い人を上から順に当てていったものだ。“緋桜”で言うと、トップ3は風也・功・有衣、トップ5は風也・功・有衣・伸次・夜ゑということになる。この言い方は他グループにもあるのだが、自然と“下橋のトップ5”と言うと、3グループの中で最も強い“緋桜”のトップ5を指すようになっていった。

「今の下橋でも、ケンカは定期的にやってるんだ。ただ前みたいに、憎かったり敵対してる奴をボコボコにする感じじゃなくて……、言っちまえばゲームとか趣味としてだ。元々ケンカがストレス発散になるとか、プロレス感覚だとかで好きな奴がここにはたくさんいるから、そういう奴がさっきの広場に集まってグループごとに分かれてやり合うんだよ。でも、他のグループも含めて基本的に皆仲がいいから、年下相手だった時は手加減するし、同じくらいのレベルの奴だったら本気でやる。終わった後怪我した小学生とかがいたら、手当は他のグループの奴でもやったりするんだ。ルールとかも色々変えてやるんだぜ。“円から出ちゃいけない”とか“ロッドのみ使用可”とかさ」

 また聞きなれない単語が出てきて、私は首をかしげる。

「ロッド?」
「あぁ、鉄パイプみたいなやつだよ。あれを特注で見た目もっとオシャレにしたやつ。俺らはその棒のこと、言いやすいように“ロッド”って言ってる」

 私が何だか面白いと目を輝かせると、後で風也達に聞くといいと言われた。どうやら功は素手しか使わないためロッドを持っていないが、他の4人は全員持っているようだ。風也はめったなことでは使わないが、有衣と夜ゑは男性に比べて非力な分それで補っているらしい。

 はっきり言って私自身とは直接関係のある話ではない。それなのに、高揚感に胸が熱くなってくる。彼らにどんどん興味がわいてくる。そんな私の横で、功は穏やかながらも真剣なまなざしを湖の方に投げ、力強い声で言った。

「今の下橋には、一般人はもちろん、他の不良たちとも極力ケンカはしないっていう掟があるんだ。でもそれは他の不良グループからすりゃあ鼻で笑ってあしらうようなくだらないものだし、ただのなれ合いにしか見えないんだろうが……俺らはそうやってこの2年間うまくやってきた。他の奴らになんと言われようともな」

 実に自信に満ちた、誇らしげな表情だった。
 私の胸の中では、下橋への憧れがどんどん膨らんでいったのだ。