コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Enjoy Club 第9話『混乱の夜明け』(1) ( No.940 )
- 日時: 2011/08/09 09:06
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: AEu.ecsA)
- 参照: 2ページですww
多くの家庭が家族でテーブルを囲んで夕食をとる時間帯。夏特有のいつまでも続くオレンジ色の西日も引いて行き、辺りがようやく薄暗くなってくる。肌をじりじりと焼くような暑さも和らぎ、昼間よりは随分と過ごしやすい。
黒い影の落ちるアスファルトを歩きながら、恵玲は沈鬱な面持ちで2、3メートル先の地面を見つめている。いつもはたくましいほどに真っ直ぐ正面を見て歩く彼女が、伏せ目がちにしょんぼりとした足取りをしているだなんて、そう無いことだ。自分でも本調子ではないことを自覚しながら、どうすることもできずにひたすら泗水駅を目指す。
恵玲の両隣には、白波と水希の姿もあった。水希は心配そうな表情でチラチラと恵玲を見ているが、白波は何を考えているのか難しい表情で前から視線を外さない。しかし白波も一応3人で並んで帰っているという自覚はあるようで、ペースの遅い恵玲に歩調を合わせてくれていた。
恵玲は今まで起きたことを、特に今日の出来事を頭の中でぐるぐるとかいつまむように思い出しながら、きゅっと眉根を寄せる。ついでふと顔を上げ、この場にはいない銀髪の少年——ウィル=ロイファーに思考を向けた。
彼は今、影晴の屋敷にいた亜弓と風也をテレポートで下橋に運んでいるところだ。月下白狼の神崎迅が二人のE・Cに関する記憶を消した、その後のことだ。亜弓も風也も固く目を閉じて、すぐには目を覚まさなそうな様子だった。
「ぼく、下橋になら行ったことがあるから連れてくよ。……眠ってる2人を家に連れて帰って家族を混乱させるより、下橋に連れていった方がいい気がするんだ。警察を呼ぶとか面倒なことがなさそうだしね。そもそもぼく2人の家って行ったことないし」
そう迷いのない声で言ったウィルは、恵玲を安心させるようににっこりと微笑んだ。そして彼は先に帰ってて、と言い残し、2人を連れてテレポートで下橋に向かったのである。その後影晴から解散の許可を得た恵玲ら3人は、こうして今共に帰路についているのだ。しかし屋敷を出たときから、なかなか楽しい話題の出しにくい重たい空気はずっと続いていた。