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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 地平線の彼方 ( No.9 )
- 日時: 2010/08/16 21:27
- 名前: 理桜 ◆umYqhWop0E (ID: 655/38A9)
- 参照: ときには諦めることも大切な勇気 byりお
(Episode 3)
階段をのぼりその先にある扉を開けたことを、俺は数秒後に後悔する羽目になる。
と、いうのもその部屋に入り、ここ何処だなんか人が居るぞと思ったか思わないかのうちにビーカーが素っ飛んで来たのである。正確にいえばビーカーと少女が、だったが。
どうもそれを投げたのわざとじゃないらしく、空中で受け止めるべく行動にでた、というのは後で聞いた話。
もちろんそんなことは露知らず俺は、それでも小学校のころテニスで鍛えたもちまえの反射神経で左手にビーカーを、右腕に彼女を受け止めた。
ふいに鼻腔に広がる、甘酸っぱい香り。そういえば女の子の髪はさらさらしていていい匂いがする、なんてクラスの奴が自慢げに言っていたっけ。
多分、何するんだというつもりが
「だいじょうぶか?」
なんて優しい言葉として出てきてしまったのも、そのせい。
少女は一瞬驚いた顔をし、
「ありがとう、あとごめんなさい」
と控えめに微笑んだ。
なんとなく訪れた気まずい沈黙。それにおされてか、
「あ、えっと菅屋真ってのが俺の名前。あ、あと十四歳」
なんていうかなり情けない自己紹介をしてしまった。
すると彼女は私?というように首をかしげると俺と同じように
「私は木下澪。これでも十四歳」
という。
背が低いからよく小学生に間違えられるの、なんて笑うから少しその場の雰囲気がうちとけた気がした。
彼女がドアノブに手をかけたとき、俺はおもわず
「一週間後!また、ここに」
と叫んでいた。なにか言わなくてはいけない気がして。
うん、わかったという彼女—澪の微笑みに少し憂いがあったのは気のせいということにしておこう。
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