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Re: 白神の剣 ( No.21 )
日時: 2010/09/09 14:16
名前: 皐月凪 (ID: VozPDcE.)

「その必要はありません...先ほど梓お嬢様のご命令で、私共が天様のお荷物をお預かりしております。」
「ちょ、ちょっと梓、どういうこと?」
「今日から天は、家の執事なのよ..他人に迷惑はかけられないわ」
「そ、そうよね...私も疫病神がいなくなって、せいせいしたわ...」
「疫病神って、雫なぁ〜」
「わ、私そろそろかえらなきゃ」
「あら、夕飯ごちそうするのに」
「ううん、いいの...家に父さんいるし...」
「じゃ、また明日学校で...」
そう言って、雫は走り去って行ってしまった...
...もしかして、雫のやつ泣いてた..?
俺は、雫を追いかけてやらなくちゃいけない気がした...
そして俺は、雫を追って走った..
「ちょっ、どこいくの天!」
「ごめん、梓さん..ちょっと雫に言い忘れたことあるから、行ってくる」
「梓お嬢様、天様が行ってしまわれましたが、いいのですか...?」
「すぐに帰ってくるわ...後でお仕置きが必要ね...」

雫を追うのは、そう大変ではなかった...雫は、御園家を離れ、200メートルほどしたところの茂みで、うずくまっていた...
「...雫、泣いてんのか....?」
雫は、顔をうずくめたまま答える...
「なんでついて来たのよ...恥ずかしいとこ..見られちゃったじゃない...」
俺は、雫の頭を撫でてやる...
「バカだなぁ〜、寂しかったら言えばいいだろ」
「さ、寂しいわけないじゃない!!...寂しいわけ...」
ったくどこまでツンデレなんだ、こいつは...
「じゃ、俺行くから...おんまり遅くなると、梓さんになにされるかわかんねぇーから」
俺は、雫に背を向け歩きだした...次の瞬間、後ろから何かに抱きつかれた...俺は、あえて振り向かない...それが誰だか分かるから...
「寂しくなんかない!!!...寂しくなんかないから!!!......もう少し..もう少しだけ...このままでいさせてよ....」
たった一日...たった一日だけしか、雫の家にいなかったのに..雫、こんなに......
雫、母さん亡くなってから、家のこと全部やって、修行もして.....あんなに笑顔でいたのに、やっぱり内心は辛かったんたんだな......こんな俺でも頼りにしてくれる雫を、俺は...俺は......好きなんだ!!

俺は、背中にしがみつく雫に振り返り、正面から抱きしめた...
「えっ...」
「雫...好きだ!!!!!!!!!!!!!」
俺は、驚く雫の唇にそっとキスをした...
「う、....」

しばらくして、口を離した....キスのあとの沈黙...
先に口を開いたのは、雫だった..
「な、なに勝手にキ、キスしちゃってんの!!...よくも私のファーストキス奪ってくれたわね、このドロボー!!!!!」
俺は、雫から強烈な横ビンタをくらった。
「いっっつ...このやろーなにすんだよ!!」
「バカ....嬉しかった..」
雫はその場から、逃げるように走り去って行った...
「お、おい、雫!!」
雫は、走りながらこちらに振り返り、精一杯の笑顔で手を振る...
俺も振りかえす...

...さて、思い返せば、雫に凄いこと言ってしまったが......まぁいいか、御園邸へ戻ろう..
俺は、この後待ち受ける、数多の試練も知らずに、御園邸へ向かうのだった...