コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.14 )
日時: 2011/09/03 00:45
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

『第二話 萩原さんのお仕事』2‐4

「おい、萩原聞いてんのか?」
「ん、ああ…、なんだ?」
どうやら少し記憶を遡っていて、ボーっとしてたようだ。藤堂の言葉で私は『今』を取り戻す。
あの後会室を出て副会長に藤堂との仲を囃したてられながら、イライラしながら公園にやってきたんだった。
後は現状の通り。雑草を黙々と抜き取る作業を、草刈り機よろしくやっていたのだった。
「何か私に伝えたい伝達事項でもあるのか? もし事務的ではなく、私情の挟んだ言葉だったら私は無視するかもしれんぞ?」
その言葉を聞いて、藤堂は少しひきつった顔をしたがすぐに元に戻り、口を開いた。
「いやさ、もう一時間ほど作業を続けてるわけだが、一体いつになったら終わるんだ?」
そんな言葉をため息をつきながら発する藤堂に、私は雑草を一束掴んで抜きながら答える。
「知らん」
そんな味もそっけもない言葉を聞いて、藤堂は電池が切れたおもちゃみたいに崩れ落ちた。
「おい、サボるなよ」
「無理だ、もう俺は疲れた。少しぐらい休憩しても良いだろう! なんか飲みたい! 割と切実に!!」
そんな子供みたいな事を言う藤堂。
確かに適度な休憩は作業の効率を上げることにもなる。正直私も少々疲れた。
「じゃあ、あっちのベンチで休むか?」
「へ?」
私の提案に藤堂は意外そうな声を出す。
「…なんだその顔は」
「いや、てっきり『馬鹿野郎、ぶっ倒れても作業は続けろ! 男だろ!!』とか言われるものと思って……」
何だそれは?そんな暑苦しい事は言う様なキャラに私は見えるのだろうか? それにどちらかというと、それは副会長のキャラだ。
「それじゃあお前は、その言葉を勝手に自分の妄想の中で信じて、そこで作業を続けてろ、私は休ませてもらう」
「ちょ、待てって。俺も限界だから! お〜い! 本格的に置いてくなって!!」
大股に歩き去ろうとした私を藤堂が必死で追いかけてくる。


公園の端にあるベンチには、上に日陰を作るためにモニュメントが作ってあり、一時的な避暑地となっていた。
そんな、今の私たちにはオアシス的な所について、ステンレス製の安上がりなベンチに腰かけたとき、藤堂が明らかに不満そうな顔をした。
なんでそんな顔ををしたかというと。
「御苦労さま! さあさあ、麦茶でも飲みなさい、後輩たちよ!」
副会長が堂々と私たちの向かいの側に設置されたベンチに座って、涼んでいたからだ。
「なんで清水さんが先に休んでんすか! さっき浅木や木内にあんだけ労働を強いてたでしょうが!!」
「細かい事気にしてると、脳の血管ぶちっ!って行っちゃうよ? ぶちって」
けらけらと明るく笑いながら、副会長は藤堂の不満を受け流す。
「浅木、私にも麦茶くれ」
「あ、はい!」
「おい! 萩原は文句言わないのか!?」
私は浅木からお茶を受け取りながら、藤堂に返答する。
「叫ぶなよ暑苦しい。ところで木内、会長はどこ行った?」
適当に藤堂に答えてから、周りを見渡して疑問の声を上げる。
どうやら私と藤堂が草をむしっている間、他の会員は皆お休みタイムに入っていたようだ。だが、会長だけは姿が見えない。
「ん〜、なんかさっき『少し用事があるから頑張って作業続けてて』とか言って行っちゃったわ」
ニコニコと笑いながら木内が答える。
なるほど、それで皆一時的に休憩しだしたのか。
会長が『作業続けてて』というときは副会長には『ちょっと休んでて』と変換される。
どういう脳内回路してるんだ?
まあ、それに乗っかってる私たちも私たちなんだが……。
「じゃあ、仕事しろよ!」
さっきまで休みたいとか言っていたくせに、自分の事を棚に上げて藤堂が突っ込む。
だが、一人として——木内と浅木でさえも苦笑交じりに——反応する者はいない。
少し可愛そうなので皆の代わりに私が言ってやる。
「とりあえず怒りを納めて、麦茶飲めば?」
「……、うん」
藤堂はこれ以上言っても無駄と感じたのか、妙にしおらしく言って目の前に置かれた麦茶を飲んだ。