コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.19 )
- 日時: 2011/09/03 00:51
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『第三話 萩原さんの休日事情』3‐1
今から数年前
世界は危機を迎えた
一つの強大な化け物
その圧倒的な力の前に、世界は絶望に侵される
町は燃え、壊れ、腐敗し
人は死に、動物も、植物も、家も、町も、都市も
全ては闇に包まれ、人々は絶望に包まれていた
だが、そんな救いのない世界ににも希望が残っていた
【英雄】
一人の男の出現により世界の流れは大きく変わる
右手に闇の力を携えて、彼は世のすべてを闇により光に導く!
『見せてやるよ! これが、闇の力だ!!』
「次世代2D型格闘ゲーム『DEAD BLACK』近日発売ねえ……」
「そうだよ、ねーちゃん!それが今日発売したんだよ!」
興奮気味の弟を横目に、私は目の前の雑誌を読む。タイトルに大きく『ゲームスペシャルブック』と書かれた本。ちなみに先月号だ。
内容は今人気のゲームや、近日発売のゲームの告知や宣伝となっている。
我が弟は俗にいう【ゲーマー】と言う奴だ。
私はゲームなどはあまりやらないので知らないが、どうやらこの『DEAD BLACK』というゲームソフト、結構有名らしい。
だが、作品の説明文を見ていると、どんな内容か解らない。
面白いのか?これ。
「で?おまえはこんな雑誌を見せて私にどうして欲しいんだ?」
「買ってきて欲しいんだ!」
弟は満面の笑みを受けべて言う。
その笑顔、私にはまぶしいよ……。
「じゃなくて、なんで私がお前のパシリにならなきゃならんのだ? 一様姉なんだが」
「何が、【じゃなくて】なのかは知らないけど、お願いだよ〜。俺、来週ちょっとしたテストがあって、お母さんにゲーム買うの禁止されてるんだよ〜」
「そいつは残念だったな」
「ねえちゃ〜ん!」
弟はついに私の服の袖を引っ張ってくる。
今日は土曜日で学校は休みだ、なので午前中は部屋で小説でも読んでゆっくりしていようと思ったのに、この弟が私のささやかな休日をぶち壊してくれた。
全く可愛い弟だよ。
「頼むよ! 俺、このゲーム去年制作決定してから、ずっと欲しかったんだよ! 売り切れる前に欲しいんだ! 買ったら姉ちゃんにもやらせてあげるからさぁ〜」
段々弟は泣きそうな顔になっていく。
どんだけこのゲームが欲しいんだ?自分の欲しいものでここまで熱くなるとは、中々珍しいかもしれない。
そういえばこの暑っ苦しい目は、藤堂の奴に似ているかもな。
ん?なんで今藤堂の事を私は思い出したんだ?
「頼むよォ〜」
「あー、もう解った、解った! 買ってきて来るから服を引っ張るな!」
「ありがとうねーちゃん! 大好きだよォ!!」
そう言って抱きついてくる。相当嬉しかったらしい。
私は現金な弟を体から引き剥がしながら、一言付け加える。
「ただし! その来週のテストで80点以上取る事。それが出来ると約束したら買ってきてやる。出来るか?」
「うん!俺頑張るよ!!」
その言葉を聞いて、私は弟の頭を軽く撫でながら部屋から出る。
全く、我ながら甘すぎだ……。
階段で下に降りながら玄関に向かと、姉さんがリビングから出てきて、私の顔を不思議そうに眺めながら言う。
「どうしたの? 珍しくお出かけ?」
「うん、母さんに昼には帰るって言っといて。ちょっと本買ってくるだけだから」
「そう、いってらっしゃい」
私はにこやかな顔から発せられる言葉を背中に受けながら、財布に弟に渡された、金をしまい外に出る。
顔を上に上げると、世界は闇になんか包まれてなく、綺麗な青空で彩られていた。