コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.30 )
- 日時: 2011/09/03 00:56
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
- 参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000
『第三話 萩原さんの休日事情』3‐3 1/2
偶然。
そういう言葉を私は信じている。
世の中は全て必然だ! とか言う奴は全く持って世界の仕組みと言うものをわかっていない。
別にオカルトじみた思想を持っている訳ではないが、不思議な力がないと説明できないものもこの世には必ずある。
私はそう信じている。
いや信じたい、何故なら。
「休日に萩原に会えるなんて、これはもう俺とお前に対する、常に離れずに生きろ! っていう神の思し召しだよな!! 俺は無神論者だけど、この際どうでもいいや!」
こんな馬鹿と会わなきゃいけないのも、必然と言う事になるからだ。
そんなのは絶対に御免こうむる。
「ったく、お前なんでこんなとこにいるんだ? まあ、どうやらゲームは買えそうだから良いけど……」
今私は『ラエックス』と言う店に、弟に頼まれてゲームを買いに来たのだが。先に来ていたらしい藤堂に列に一緒に並ばせてもらったのだ。
藤堂は気合を入れて臨んでいるのか、列の前から20番目位にいたので、この分ならゲームは買えるだろう。
あれ?この店ってどのくらいソフトの在庫在るんだ?軽く百人くらい並んでるけど……。
絶対最後まで行きつかないよな……。
「あー、俺は姉貴に頼まれてな。なんか大学のレポートが在るんだけど、ここのゲームが欲しいとかなんとか言われて、強制的に朝っぱらから並ばされたんだよ」
「なんだ、お前もか。私は弟に頼まれてここに来てな」
「おお! じゃあ萩原をここに送ってくれた弟君に感謝しなけりゃな!」
見ていてまぶしい笑顔でこちらを見てくる藤堂。
ああ、やっぱり先刻みた弟と同じ笑顔の種類だ。つまり、こいつの精神とかは小学生並みなんだな。
「お、もうすぐ10:00だ。開店するぞ」
私がそんな事を思っていると、藤堂が腕に付けた安そうなデジタル式の時計を見ながら言う。
と、その言葉に呼応するかのように、店の大きな入口のシャッターが、ガガガという音と共に開いた。
同時、周りの人間が、
『うおおおおおおおお、キタァアアアアアアアアア!!』
と叫びだした。
どこかで打ち合わせでもしたのかというような、ぴったりのシンクロ。
「ひぇ!」
いきなりの事に驚いて、自分でも可笑しくなってしまうような声をあげてしまう。
「おお! 萩原!!そんな可愛い声も出せるのか!」
そんな声に対して、藤堂は状況を全く考えずキラキラした目でそんな事を言う。
「うっさい! そんな場合か! なんなんだよこの魂の叫びは!?」
「さぁ? なんか発売日が伸び伸びなってたらしいから、皆色々思うとこがあんだろ。それより列が動いたし行こうぜ」
いきなり冷静になってしまった藤堂に、若干イラつくがしょうがない。いまだにガヤガヤしている周りの人間たちに混じりながら、列に会わせて歩いていく。
「しっかし、ゲームごときでここまで熱くなれるもんかね……。私には理解できないんだが」
「まあ、人それぞれだろ。もっとも俺もそんなにゲームはしないからな。そういえば【エコ会】の連中はどうなんだ?」
「ん? ああ、清水先輩と木内はよくやるらしいぞ。浅木は聞いたことないな」
「会長は?」
「……。清水先輩がやる、イコール会長がどんなに嫌でも付き合わされる。解ったか?」
「理解した……」
若干ひきつった笑みを浮かべる藤堂。
まあ、あの二人はそんな感じで今まで一緒にいたんだから問題ないだろう。会長にはご愁傷様としか言いようがないのだが。
そのあとも多少雑談を加えながら店の中に入る。店の中は機械系のモノが一杯在って、普段古びた電気屋に来た事しかあまりなかった私には新鮮だ。
これだけたくさん在るなら、電化製品を買うのに困る事は無いんじゃないか?
そんなことを考えながら、熱気にあふれた列に従って歩いて行くと、すぐにゲーム関連の売り場に着いた。
「……」
「……」
だが、売り場に着いた途端。私と藤堂は沈黙してしまう。
何故なら。
「はぁ〜い! 皆さん押さない駆けない慌てない! 抜け駆けせずに、仲良く買ってねェ!」
よく見知った短髪の女性が居たからだ。