コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.7 )
- 日時: 2011/09/03 00:34
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
- 参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000
『第一話 萩原さんの日常』1‐4
「痛い目?」
藤堂が疑問の声を上げる、だが返答しようとした私の声は、トントン、というノックの音よって先送りになる。
「どうぞ〜」
浅木がノックに返事をしながらドアを開ける。
どうでもいいが、私の時にはあけてくれなかったような……。
「あら、藤堂君やっぱり来たのね?」
「ん、ああ」
入ってきたのは木内 希だった。
木内はふわふわしている髪を押さえながら、私の隣の席に座る。
そういえば同好会の部室——同好会だから会室か?——の間取りを説明していなかったな。
まず部屋の広さは教室の半分くらいだ、これは同好会に割り当てられる部屋としては最高級だろう、それだけの活動を【エコ会】はしているということでもあるのだが。
そして、中央には長テーブルを四つくっ付けて一つのテーブルとしている、後は各自好きなように壁に立てかけてあるパイプ椅子を引っ張って来て座る。
いつも私の定位置は窓側の一番端、木内はその右隣だ。
今は私の向かいに藤堂が座っている、本来そこは浅木の定位置なのだが……。
ちなみに場所を追いやられた浅木は藤堂の隣で、のほほ〜んとしている。
なんかその顔はアホっぽいからやめた方が良いぞ浅木。
「それで? 琳奈から良い返事はもらえた?」
「あ〜、う〜〜ん、よく解らん」
木内はその言葉に疑問を持ったのか、私の方を見やる。
私は完璧な無表情で木内の視線を迎えた。
どうやら、その無表情から何か読み取ったらしく木内は苦笑しながら藤堂に視線を戻す。
「まあ、脈無しってわけでも無さそうだから、頑張ってね?」
「もちろんだ! 俺は一度惚れこんだ相手は逃がさない!」
それはある種の変態発言だ、気持ち悪いから即刻撤回しろ。
そもそも脈などミジンコほども無い、いい加減な事を言って相手を期待させるのはどうかと思うぞ木内。
それはそうとして、疑問に思ったことを木内に問う。
「木内、遅かったけどなんかあったのか?」
「あ、そうそう。会長がね明日仕事の依頼が来たから、今日は各自自宅療養ですって」
どうやらそれを他の会員に伝えるために遅くなったのだと言う。
ならここに何時までも留まる理由もない、それはそれで楽しいだろうが今は馬鹿が居るからな。
「なるほど、なら今日はさっさと帰るかな。一緒に帰ろうか木内。浅木もどうだ?」
「あ、はい、お供します」
「そうかじゃあ行こう」
そのまま私がドアノブに手を掛けたとき、木内が私を呼びとめる。
「琳奈」
振り返るとちょっと呆れた顔で木内がこちらを見ていた。
「藤堂君が寂しがってるわよ?」
見ると藤堂はこちらを誘って欲しそうな顔をして見ていた。
はぁ〜、と私はため息をつく。
木内の言葉なら仕方ない、私は顔に『本当は嫌なんです』というムードを出しながら藤堂に声を掛けた。
「……、お前もついてくるか?」
「ああ!」
元気いっぱい返事された、全く子犬みたいなやつだな。
この元気さを他に向けて欲しいものだとつくづく思う。
家に帰って私を待っていたのは弟の遊んで攻撃と母の手伝って攻撃だった。
私はそれを悉く打ち破り(つまり従った)夕飯と風呂に入った後、寝支度ををしてからベットに倒れる様に飛び込んだ。
心地よい睡魔に身を委ねていた時に、何故か思い出したのは学校からの帰り道の事だ。
藤堂が同好会に入るということを木内に言ったら。
「あらあら、それは賑やかになるわねぇ〜、でも大丈夫?」
と心配そうにしていた。
藤堂はそれをどうか解釈したかは解らないが、あいつは一言。
「大丈夫だ!」
と言っていた。
どうも【エコ会】を単なるエコロジーを気にする団体だと思っているようだ。
それはもちろん正しいし、それが主目的なのだが【エコ会】はそれだけの同好会では無い。
地域の環境を守るため色々なボランティアをする同好会。
それが【地域環境保全ボランティア同好会】なのだ。
どうしてあんなに広い部屋を割り当てられているのか、それを考えれば自ずと疑問が出てくる筈なのだがな。
まあ、明日の『仕事』をすればあいつもどういう事か解るだろう。
私はそんな事を考えつつ、藤堂の驚いた顔を想像して特に何の感情も抱けず、今日一日が嫌に疲れた事を感じ、こんなのが日常になったら嫌だな、と思いながら完全な眠りについた。
———————『第一話 萩原さんの日常』 了