コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: しろべに。 ( No.1 )
日時: 2010/08/25 20:54
名前: 卵白 (ID: 8hgpVngW)

◆プロローグ

昔々、あるところに、
とある古ぼけた本がありました。

その本は人の思いを吸い取る事が出来ました。
吸い取って吸い取って、本は思いました。

「人間はどうしてこうも、汚くなってしまったのだろう。欲で動いているじゃないか。なんとかしなくちゃいけないな」

その本は、綺麗な絵本でした。
でもその絵ももう色あせてしまって、文字も読めません。

本は願いました。
吸い取った綺麗な思いだけを力に、願い続けました。

どうか、また僕を読んでくれる人が訪れますように。
どうか、人々を助けてくれる誰かが訪れますように。

何年も何年も願い続けました。

そして本は、埃だらけになって力尽きました。

それから何十年もあと、
その本のもとに笑い声が聞こえてきました。

小さい子供の笑い声です。

ばたんと音を立てて、扉が開きます。
新鮮な風を表紙に受けて、本は目覚めました。

「あ!えほんがある!」
「ほんとだ!みくちゃんとってー」
「うん」

小さな手が、本をつかんで、本は少しだけ身じろぎしました。
これは夢か幻か。どうやらどちらでもないようです。

「よむ?」
「よんで!」

静かに表紙が開かれました。
本は嬉しさに包まれました。
そして、決めたのです。


二人を正しい方向へと導く事を。