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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: しろべに。 ◆キャラ募集中◆ ( No.14 )
- 日時: 2010/10/22 20:47
- 名前: 卵白 (ID: lTlVXzN9)
◆第五話
小鳥の群れる林の奥。
そこに私の家はあった。
咲き誇るバラ、バラ、バラ。バラに小さく「灰田」の文字が埋もれていた。
「…早く夕飯を作ってくれる?今日私仕事なのよ。
メイクがあるから、よろしく」
扉をあけると、お母さんのきんきん尖った声が飛んできた。
「「かりん、アイロンかけ終わってるの!?早く出して」」
そして良く似たお姉ちゃん達の声。
私は顔をこわばらせながら、言った。
「はい、今すぐに」
お母さん達はモデルだ。
私はただの目立たないいい子。
お母さん達はそれが気に入らないのと、仕事が忙しいのを理由にして私をこき使う。
アイロンのかけ終わった、私にはとても似合いそうもない可愛らしいスカートをハンガーに掛けた。
「かりん!スカート渡して!」
「はい」
私の手渡したスカートを、お姉ちゃんはばさばさと身につけて、難癖をつけ始める。
「ここシワ寄ってる。これ気に入ってるんだから。今度シワ寄ってたら新しいの買ってもらうからね」
「…はい」
「あー!やだ!!もうこんな時間!ご飯いらない」
「行くわよ!準備できた?」
「はいはい」
どたどたと三人が家を出ていくと、急に静けさが訪れた。
どうせ撮影では違う服を着るって言うのにあの騒ぎ様。私服で撮影になったらどうなるんだろう。
私のいなかった間にたまった食器を洗い、散らかった部屋を片付ける。
———我ながらみじめだな…。
私の足音、私の息遣いだけが妙に大きく聞こえる。
広い部屋の中、恐怖感がゆっくりと顔をもたげ始めた。
あの時の記憶が、少しずつよみがえり始めた。
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