コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: あぁ…あと、もう少し…。(← ( No.401 )
日時: 2010/11/01 08:52
名前: そるとくりーむ ◆04Sod1e4Kw (ID: W3aU.Uy/)

あの後……私と沙耶様はあの空間から抜け出し、今は本家へと繋がる長い道を歩いている途中。

「や……やっぱりこの家、デカいですね……」

そんな言葉が、私の口からこぼれる。

さっきもこの七瀬家の門(学校の校門より遥かにデカい)の付近に来たけど、やっぱり——……

2回見ても、何回見ても、やっぱりこの家はデカすぎる。


————……そんなにデカい家が好きなのか。

「当たり前でしょう? アンタ此処を何処だと思ってるの…… 偉大なる七瀬様の自宅なのよ?」

沙耶様は真顔で、当たり前のようにそう言う。

——……偉大なるって……自分で言いますか……。

「それにしても、さっき理解不能な空間から抜け出して……

 それから、もう20分くらいずーっと歩いてますよね? まだ着かないんですか……?

 前にはもう、建物が見えてるのに……どんだけ歩くんですか……っ!!」

その言葉の途中、ヒューッ、と強い風が吹く。

「さ、さ、……寒いっ……!!」

さっきこの場所の付近に来たときよりも外は暗くなっていて、風も明らかにさっきより冷たい。

「もう少しで着くんだから我慢しなさいよね……っ、はぁ、寒い……」

そして隣にいる沙耶様も、私と同じく体をフルフルと震わせていた。


—————……まだ家に着かないのか。



……——————……


その後5分くらい歩いて……さすがにただひたすら歩くのも暇だし飽きてきたので……ふと、

立ち止まって上を見上げてみた。沙耶様も私に合わせて、それと同時に止まってくれる。

「……何よ、いきなり立ち止まって。 何かあるの?」

「いや……ちょっと、この木に……」

私が立ち止まって見上げたモノ。それは———……大きく、どっしりとした一本の木。

他にも木なんて沢山あるけど、この木は他の木と何処か違うオーラを持っていて……

何故かこの木に凄く惹かれ……気がついたら、この木の下で立ち尽くしていた。

「この木—————……なんの木ですか?」

私はボーッとしながらも沙耶様に問いかける。





—————————……そのとき……

沙耶様の表情が、少し曇ったような気がした。


けどそれはほんの一瞬で、すぐに返事が返ってくる。

「はは……綺麗でしょう? 本当綺麗……ね。全て忘れてしまうくらいに……
 
 全て、壊れてしまうくらいにね」


“全て、壊れてしまうくらいに”

その言葉……その時は特に違和感は感じなかった。それが沙耶様の“感情”で、

私と同じく、沙耶様も純粋にこの木が綺麗だと思ってる……。


そう思えた—————……その時だけは。


気づかなかった。というよりいっそ、あのまま気づきたくなかった。




————……沙耶様が、……あの時……私と真逆の、正反対の感情を抱いていたことに。





「あ———……沙耶様、そろそろ行きましょうか?」

「ぇ……あ、あぁ……」


そのまま何事も無かったかのように歩き出す私達。

その後もしばらく歩いて、……やっとインターホンの前に到着した。

扉の前に立つと、間髪入れずに扉が開く。


———……さすが金持ち、自分の家の玄関が自動で開くなんて。

監視カメラも様々な箇所に設置され、セキュリティ設備も万全。

———……さすが金持ちだ。

「お帰りなさいませ、沙耶様!! 東雲真白様!!」

真っ先に目に飛び込んでくる、中央にあるシャンデリア……

高級感溢れるロビーは、前にTVで見たセレブが泊まるような高級ホテルのロビーよりも大きい。

そんなロビーの中央に、4人の使用人さんらしき人が並んでいた。


こんなにデカい家だから、使用人さんとか50人程いるのかなと思ってたけど……

4人って案外少ないな……って、
なんか感覚がおかしくなりつつあるのは気のせいだろうか。

———……まぁ、玄関開けたら使用人が自分の家の中に並んでるってだけでも、
十分目が飛び出るほどびっくりだけど……。

「あ、ぁ……は、はい……た、ただいま、ですかね……?」

緊張して上手く言葉が出ない私をよそに、当たり前のように中へ入っていく沙耶様。




————……あぁ、そういえば此処は貴方の家なんでしたっけね。


私は慌てて沙耶様についていく。……冗談とかドッキリとか無しで、本当に此処が沙耶様の家なのか……

そう考えると少し怖い。自分の家にこの大金持ちお嬢様(七瀬の場合、御坊ちゃん)

 が遊びに(?)来たなんて……。

沙耶様とか七瀬とか沙奈ちゃんとかに向かって暴言吐いたら、使用人とかSPに殺されるのかな?


……射殺? 銃殺? ……なんでもありえそうだ……。

ってか、暴言吐いて殺されるなら私はもう死んでるんじゃ……。

そんな事を考えながら、広い廊下で沙耶様を見失わないように必死で追いかける私。

床の綺麗で真っ赤なカーペットを汚さないように、つま先立ちで早歩きをする。


まぁ、爪先立ちとかしても意味はないのかもしれないけど……。


……とりあえず、それは『できるだけこの床を汚さないようにしよう』という気持ちの表れって事で。



———……というか、それよりも……何よりも……

私は歩きながらカーペットや壁や天井を見つめる。

……こんな綺麗な床を私が歩いて、本当に良いのだろうか。あとで通行料請求とか来ないだろうか。


変な恐怖心と、罪悪感というか何というかよく分からない感情を抱きながら……


「はぁ、遅いわよ…… ほら、アンタはこの部屋で待ってなさい。今支度をしてくるから」


やっと沙耶様に追いついた————……っ!! 














……と思ったら、今度はUターンして走っていった……



———……って、って、この部屋で待ってなさい、って、……ここ、どこだよっ!?

意味が分からない。なんだ、私に何をしろと言うんだっ!?


———……まぁ、心の中でそんな事を叫んでいても仕方がないわけで。

私はとりあえず、静かにノックをし……沙耶様に案内された部屋の扉を、少しずつ……ゆっくり開けた。