気がつくと、私—…秋本奏音は保健室のベッドに横たわっていた。「やっと目が覚めたようね。」保健室の椎名先生がスリッパをパタパタ鳴らしながらかけよってきた。「あの…私、殴られたんですか…?」殴られたのなら、激しい頭痛がしたはずだ。けれど、頭痛は一切しない。「殴られそうになったところを、一之瀬君が助けたのよ。でもあなたはショックで既に気を失っていたの。」一之瀬君か——…。助けてもらったのならば、お礼をしなくては。奏音は保健室を出て、教室へと向かった。