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Re:    rainy blue...... ( No.6 )
日時: 2010/09/04 20:48
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

001 /神楽side


「ねえ、何の本読んでるの?」
「え?」
 彼女——榎並逢来にそう話しかけられたのは、逢来が俺の前から消えてしまった日の丁度半年前だった。この日から、半年後のあの日まで、そんな短い日々を鮮明に覚えているのはきっと逢来との思い出だから。


 でも、君はもういない。


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————

半年前

「おい奏。また図書室に行くのか?」
「……んー」
 もう既に読み終えてしまった大量の本を見て呆れたように言うのは、小学校からの腐れ縁の正輝若葉だった。腐れ縁と口に出したらきっと首を絞められて半殺しにされるのは目に見えて分かるから、言わない。実際、一度絞め殺されそうになったことがあるけど。
「お前はいつもそうだよな。マイペースと言うか天然と言うか」
「……眠」
「人の話聞けよ」
 ゴチャゴチャ言っている若葉を放っておいて、俺は図書室に向かった。利用している人が少ないからか蒸し暑くなく、俺は其処でよく寝ている。
「部活終わったら起こしに行くからー!」
 後ろから、若葉の声が聞こえた。


——ガラッ

「誰も居ないし」
 いつもは少なくても二人は居るのに、今日は誰も居なかった。少しほっとして指定席の窓際に座る。冬は少ない日差しが良く当たるし、夏は窓を開ければ風が良く通る。
「……今日は本読んでから寝るか」
 本棚から適当に本を選んで椅子に座る。気に入らなかったら机に置いて、取りに行く。要領という言葉を知らない俺は、いつの間にか机に大量の本を積んでいた。でも、それに気づかずに一冊の本に夢中になっていた。

その為に、かなり大きな音をたてて入ってきた女子に気づく筈なかった。

「ねえ、何の本読んでるの?」
「え? うわっ!?」
 ぐらりと本が崩れるのを視界の隅で認めた……時には既に遅く、俺は直に本の雪崩に巻き込まれた。女子の悲鳴が聞こえたけど、俺は声を発した奴が雪崩を起こした張本人だと考える暇はなかった。
「あっごめんっ! だ、大丈夫かなあ……」
 少しずつ上に乗っているものが軽くなっていくのと同時に、視界もどんどん明るくなっていった。そこで初めて、本を倒した奴と声をかけてきた奴がこいつだと分かった。怒鳴ってやろうと起き上がりそいつを見た。

 其処には大きな瞳の少女がいた。