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Re:    rainy blue...... ( No.18 )
日時: 2010/09/12 10:58
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

003


「いや、冗談だろ。どう考えたって逢来は……」
 逢来にはどう考えても人を倒したり、ましてや暴走族など考えが付かなかった。人は見かけによらないってよく言うけど。
「だから、噂だけど注意した方がいいぞって事。実際、榎並が友達とかと居るところ見たことないからさ」
 じゃあ、と手を振って足早に去っていく若葉を呆然と見つめていた。俺も〝噂だしな〟と解釈し、若葉と逆の道を進んだ。

 この時、気が付いていればよかったんだ。もっと、気にかけていればよかったのに。


「おっはよー奏!」
 昨日と真逆のテンションの若葉。まあ常にプラス思考の彼にはきっと昨日の事などゴマ粒ほどだ。今回は……違うかもしれないけど。
「なあなあ、昨日の続き。榎並さ、この前男を背負い投げしてたってさ! やっぱ、暴走族の娘は——」
「やめようぜ、その話は」
 もう、逢来の噂に振り回されたくはない。逢来だって、事実でもない噂に振り回されて困っているはずだ。
 それはただの、下世話な興味。
「……あ、榎並だ」
 複雑な表情をして俯いていた俺はバッと顔を上げた。それは確かに逢来だった。だけど、昨日の雰囲気とは全く違う。
 声をかけるな。そう言っているような雰囲気に、皆もすっと半歩下がった。俺の横を通り過ぎる時も、全く俺の方を見ようとしなかった。
 何故?
「——だから言ったろ? アイツはそう言う奴なんだよ」
「違うよ」

 違う。逢来はそんなことを望んでいないはずだ。

「は? 何が違うって?」
「周りが悪いんだろ! 事実かどうかも確認せずに、適当な噂流して。ちゃんと本人に聞いたのかよ!?」
 若葉の返事も聞かずに俺は屋上に走った。この行き場の無い苛立ちをどうにかしたくて。

 空は、どんよりと曇り始めていた。