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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: やさしくしないで。 ( No.10 )
- 日時: 2011/01/15 16:58
- 名前: 三春 ◆OTogeME6uU (ID: mznU1Olg)
“つむぎちゃん”
“見えるんだよね”
……泣いちゃうよ?
あんまり、嬉しいこと言うと、泣いちゃうよ?
ぎゅっと冷え切った手を、ぎゅっと握りしめる。
今は泣いちゃだめ。
そう、だめなの。
「……高橋?」
わたしが下の名前で呼ばれたことに不愉快感を感じたと思ったのか、織田はうつむき加減のわたしの顔をのぞいてきた。
……いや
そんな風に呼ばないでよ。
わたしが呼んでほしいのは……
「つむぎ……って呼んで。
……っあ、ごめん! なんでも、なんでもないから!」
わたしは言葉の重大さにすぐさま気付き、その場から立ち去ろうとした。
けれど——————……
「つむぎ!」
わたしの手首を力づよくつかんだ手は、織田の焼けたたくましい手だった。
……温かい。
寒い中、外で練習してたっていうのにどうしてこんなに温かいの?
「……」
わたしがいくら振り払おうとしても、振り払えない。
……やめて。
やめて。
こんな時に、呼ばないで。
触らないで。
涙があふれてきちゃう。
好き、があふれる……
愛しい。
切ない。
「……っ——————」
ふたりの腕はつながったまま
しばらくの沈黙が流れた——————
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