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第６話　Ｆ（エフ）

なのに...

「ちょい、いい？」

白根に呼び出されて体育館裏へ移動する

あれ....嫌な事しか思い浮かばない

フラれる

心当たるのはそれ１つだけ

怖い

怖い、怖い————

「あのさ...」

怖い...

その思いだけが先走って目をきつく閉じる

「....目...つぶってて」

いつもとは違う

甘い声

いつの間にか恐怖もどこかへ飛んだ

—————時だった

「っ」

口に生暖かい、柔らかい物が当たる

え...ちょ....待っ...え？

頭が混乱したまま、口に当たっていた物が離れる

うそ....？いや、現実

「悪ぃ..」

そう言い残して白根は走ってどこかへ行った

白根の顔は見れなかったけど

耳は赤かった

今のって....

マンガでしか

小説でしか

どこかの国のおとぎ話でしか聞いた事はない

まぎれもない——————キス

私は混乱してその場からしばらく動けなかったけど

野球羽がいなくなったのを見計らって嘉穂と一緒に家に帰った