コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 巫女の少女と命使いと 参照五百突破です、これ死亡フラグですね ( No.104 )
日時: 2011/01/03 23:16
名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
参照: http://ameblo.jp/mekurumekunovel-blog/

 その後は何事もなく全くもって変動していないカリキュラムをこなし、HRと言う名の時間となった。
 実は現在神之宮の転校をきっかけとした席替え騒動が勃発しており、とある面白い事オールオッケー主義の発言が発端だったりするわけだが、まあそれはどうでもいい。居眠りがばれないのならばどうでもいい。つーか、ぶっちゃけばれてもいい。
「だから言っているだろう! 我はこちらのやり方を尊重すべきだと!」
「いや! あたしはこちらのやり方の方がいいと思うよ!」
 だが、問題はあの教卓でいがみ合っている、莫——じゃなくて、ダブルクラス委員長だ。
 このクラスには二人のクラス委員長が居る。一人は我が幼馴染兼親友の茜であり、もう一人は「我がモットーは天上天下唯我独尊だ!」と初めての自己紹介で平然と言い放った選民思想野郎、井上明月(いのうえめいげつ)だ。
 天上天下唯我独尊は勿論のこと、「我有り、故に世界有り」とか「地球は中心を軸で自転をしているわけではない。我を中心にして自転しているのが真実だ」とか「万物は我に平伏すべきだ。何故なら、我が森羅万象の創造主だからだ」とか、オリジナルバージョンの自己中心発言まで作成して自信満々に発言できる奴を、俺はかつて見たことが無い。
 因みに、それのバリエーションは非常に豊富だ。全くもっていらないほど豊富だ。最近は己を神だと思い始めている。質(たち)が悪いにも程がある。
 そんな二人が学級委員長になったのは、二人が立候補し、二人が同数の票を獲得したためである。
 ナルシズム精神野郎はあれはあれで能力が高く、顔も意外とイケメンだったりするし、茜はまあ百パーセントキャラ受けだろうが、人気がある。そう何より顔とキャラがいいのだ。
 俺より莫迦だけど。
 しかしやはりリーダーシップがあり、人気も高く、そんな同族が同じことをやったら反発するに決まっている。
 茜はあれで自分が気に入った方に持って行こうとするときは我が強かったりするし(ま、要するに面白い方に持って行く時は容赦ねえってことだ)、ナルシズムは言うまでもない。
 磁石だって同じ極を近づければ反発するんだから、それと同じ、一般に同族嫌悪と呼ばれる現象である。
「だ、か、ら! お見合い形式がいいって! 男女別々に分かれて、自分の好きな席に座って! そうすれば自分の好きな席が選べるし、ドキドキ感が有るじゃない!」
「ふん、これだから愚民は。そんなことをしたらあぶれる者や、仲良しこよし組が出てくるだろうが。全員が公平に、そして嘘偽りなく、文句をつけるべきところが無い方法はくじ引き以外に存在しない。くじは被ることはないが、自ら席の希望を言えばどうやったって被るところが出る。それは好きな席を選べると言えるのかね?」
「だからねぇ!」
 何とも低レベル、低レベル過ぎな会話だ。浅すぎるぞお前ら。そんなの激しくどうでもいいだろう。ま、面倒だし突っ込む気は無い。取り敢えず部活だからさっさとしてくれとは思うが。
 俺は後ろの後ろ、神之宮の席を見た。そこは空席で、先述したとおり転校早々休みとなっている。あの傷は結構酷かったんだな。悪いことをした。主犯は俺じゃあないが。
 クラスメイト達もうんざり気味である。こうなるとあいつらは止まらない。
 いや、ノンストップで勝手に暴走してくれるのはいいんだが、戦争で命を落とすのは天皇や将軍でなく、何の罪もない国民であるように、あいつらの矛先は結局罪なき俺らにも飛び火する。
「じゃあ多数決をとりましょう!」
「ああ、そうしようじゃないか!」
 ダブルスはこちらをギロリと睨んだ。要するに「勿論あたし(我)のを選ぶでしょ(だろう)?」という意味だ。
 茜は柳眉を逆立て、井上は拳を握りしめて今にも出血しそうだ。井上をみならってオリジナルの言葉を作るなら、女神も怒髪天をつくと言う言葉が似合うかな、今の茜には。
 暴走しても良いけど本当に危ない時は急ブレーキ掛けろよ、と、俺は心底思った。


 結果は半々。同点だ。
 いや、勿論仕組んでいる。結果は公平性を高めるためこいつらは廊下に出るから、その間に適当にどちらに手を上げるか担当を割り振って、最終的な決定は担任に託すのだ。
「「さあ結果は!」」
 ご両人は息ぴったりに教室に入り込み、結果を伝えて憤慨した。が、皆慣れているので華麗にスルーしていく。で、お互いを罵倒しあうのも華麗にスルー。
「はーいはい二人ともそこまでー。後は俺が決めとくからさー」
 担任は仲裁に入る。面倒くさがりだが学級崩壊の方が面倒だそうで、行き過ぎは止めるのである。
 勿論席の決め方は適当だ。部活の先輩によると、曰く「白紙の座席票に一つずつ思いついた名前を書き連ねるだけ」というシンプルイズベストの思想の方もびっくりなやり方だ。
「あーほら、今日はもう解散、かいさーん」
 俺は嘆息をつきつつ、足早に部室へと足を運んだ。莫迦共の言論はまだ聞こえていた。


 さあ、ようやく俺が最も話したい所まで時間が追い付いた。もう分かっていると思うが、今回の事件の発端は井上である。
 しつこいようだが、この時は一切そんな事は考えていなかった。俺の脳に未来を見通す能力はないからな。
 だが、今俺は思う。

 未来を見て、この状況を変えられたら——と。