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Re: 巫女の少女と命使いと 参照六百突破&久々の更新です ( No.109 )
日時: 2011/01/15 19:33
名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
参照: http://ameblo.jp/mekurumekunovel-blog/

 中途半端な所で切れますが、二つのお話に分けます。五千字近くにまでなってしまったので。御了承ください

* * * *

「うぉえっ……」
 俺は間界へ行く時のあの感覚を味わい、両手両膝を地面について悶えていた。
 今ここには俺と神父服を着た啓樹が居て、啓樹は何事もないかのように突っ立っている。よくもまああれに耐えられるな。
「ブラシーボ効果って知ってるかい? 人間の思い込みの力の強大さを考えさせられるよね」
「これは思い込みごときで誤魔化せるものじゃねえだろ……」
 ブラシーボ効果ってのは確か人間は思い込みだけで病が治せるっていうあれだろ?
「やってみなよ、これって間界に行くために、体内の神がかなり無茶してるから起こる現象なんだ。精神論で結構解決できるよ?」
「精神論は所詮精神論だろうが。肉体的に不可能なことはできねえんだよ」
 つい最近これと同じこと言った気がするな。
「所詮精神論、されど精神論だよ」
 啓樹は俺に、そこら辺の同級生にでも見せたらコロリと恋に落ちてしまいそうな、爽やかイケメンスマイルを向けてきた。イケてるメンズスマイルを俺に見せつけても意味ねえぞ。
「つーか、お前は一体何処からその神父服を調達してきたんだ。瞬間速着替えかよ」
「いや、これは学校のある所に忍ばせてあるんだ。いつも見つからないかと冷や冷やしてるんだよ? これでもね」
 嘘臭い。というか、嘘としか思えない。こいつなら学校長どころか、この学校の設計をした人でも思いもつかないような場所を見つけ出すような気がする。……そういえば。
「おい、それってもしかして学校内か?」
「それがどうしたの? もしかして、思い当たる節でも?」
「いや、そうじゃなくて」
 俺が初めてこいつらを見たあの日。学校の下駄箱前に鍵が落ちていた。もしかして、あれはこいつらが落としたのではないかと思ったのだ。
 いや、おそらく学校内に残しておいたらこいつらも取れまい。校内に入れないからだ。だから鍵はあそこに置いておく仕様であると推測できる。
 なんだ、心中で色々と考えを巡らせていたのに無駄か。
「まあそれはおいておこう、まずはあれをどうにかしないとね」
 啓樹は真っ白な空間で両腕に生えたチェーンをそこかしこに叩きつけている黒き巨体を見た。
 いつも通り——まあ俺は一度しか見てないが——表情のない真っ黒で無表情な能面を張り付けたかのような顔である。良く見ると、腕にある出っ張りにチェーンが掛かっているようだ。
「そうだな」
 俺は相槌を打つ。さて。
「どうするんだ? 俺は? まだ初心者の俺は棒立ちしてたらいいのか?」
「いや、まず君には一人でやってもらう。なに大丈夫。あの憑苦喪神は比較的低い怒りみたいだからね、そこまで強くないさ。それに君には今究極の力とも言える力があるだろう? まったく、命使いなんて僕の想像外にもほどがあるよ。初代エースの力、僕も見たいしね」
 啓樹はフワフワ効果を付属させたイケメンスマイルを絶やさずに言った。
「どうしても危険な状態になったら助けるから、安心して」
「チッ、へーへー分かりやしたよ」
 俺は頭をガシガシと掻きながら、憑苦喪神を見据えて歩き出した。
 ザッ。
 憑苦喪神の二メートルほど離れた正面に立つ。憑苦喪神はこちらに気付くと凝視してきた。
 俺はなんとなくこいつに話しかけた。いや、もしかしたら決め台詞的なことを言いたかっただけかも知れんが、
「よお、お前悪いけど消えてもらうわ」
 うわ、キザっぽい台詞だ。後者っぽいが、別に格好つけようとしてはいないからな。
 憑苦喪神は俺の発言の直後右腕に生えたチェーンを振りつけてきた。俺はまずブレザーの右ポケットに手を入れる。その取りだした物を間に挟んでチェーンを受け止めた。
 バコッ、手とチェーンの間から音が聞こえる。俺が校庭から持ってきた比較的大きな石が砕けたのだ。
 本来こんなものを持ってくる気はサラサラなかったのだが、啓樹が、
「間界にはほとんど何もないからね。命使いの能力を有効活用するには何か物体が無いと駄目だろう?」
 という事で、適当に落ちていた石を拾って来たのだ。
 俺はその石の破片ごと、敵のチェーンを掴んだ。
「うおらあ!」
 右腕で引っ張り、更に左腕でもチェーンを掴んで引っ張る。相手は意表を突かれたのか単純に非力なのか、前方によろめいた。俺はチェーンを投げ捨て、先ほどの破片をもう一度握りしめる。
 初めての能力発動はもっと安全にすべきだろうが、気にしている場合ではない。
 俺は叫んだ。
「ありがたく、受け取りやがれっ!」
 野球のボールを投げるフォームをしつつ、生命力を石に渡した。
 直後俺の膝から力が抜けた。
「おわっ?」
 そのまま石を投げれずに前に倒れた。何だ?
 良く状況を理解できず、前に倒れて力も入らぬまま、俺はチェーンが擦れる音を聞いた。左からチェーンが迫ってくる。あの野郎、転んだ状態のくせに足掻きやがる。
「チッ!」
 俺は右ブレザーのポケットから左腕で石を取り出し防ぐ。砕け散った石が顔にあたり、直後背中に重い衝撃と、パイプの棒で殴られたかのような痛みと音がした。左腕のチェーンか。
 吹き飛ばされたりはせずに、右手についたチェーンの上を転がり、そこから離脱した。とりあえず膝立ちになる。
 っつああああ! 痛えな畜生!
 後頭部を擦りながら転んだ状態で良かったと思った。立ってやられたらもっと痛えぞ、ありゃあ。憑苦喪神は既に立ち上がり、チェーンをヒュンヒュンと回している。勢いをつけているのだろうか。
 しかし、莫迦なミスをしたもんだ。おそらくあれは石へ生命力を投与し過ぎたのだろう。一気に抜かれたから、一瞬全身の力が抜けたわけだ。間抜けだな。
 いや、初めてでまともに生命力を与えられたんだと、プラス方向に解釈すべきか?
 後頭部を擦りながら立ち上がる。
 憑苦喪神は表情を変えずに——というか表情ないが——怒りのオーラだけを発散させていた。負の感情の塊たるこいつに負の感情を更に覚えさせるのは、自ら敵に塩を送るようなものだろうが、こればっかりは仕方ない。うっかりだ、うっかり。
 ヒュンヒュンと両手のチェーンを回して、勢いを付けた憑苦喪神は両腕のチェーンで俺を挟み込むように腕をふるった。バックステップというか、単純に後ろへ下がって回避し、破片を投げる態勢にはいる。生命力はもう付与させてるから、後は投げるだけだ。
 生命力が付加されたためかもぞもぞと動いている石を振りかぶり、
「よっしゃ行け俺の僕(しもべ)達! あいつに穴を穿ってや——」