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Re: 巫女の少女と命使いと ( No.17 )
日時: 2010/09/25 13:15
名前: 山口流 (ID: 3iqcZzcT)

 一メートルと五十センチ程度で五段構成の靴箱の一番上という、最も取りやすい位置に存在している自分の靴入れスペースから上履きを取り出し、二階にある我が一年C組の教室に向かう。
 クラスはAからDまであり、Aが成績優秀者の寄せ集めである以外は、通常通りランダムに決定される。
 よってA組の生徒は他クラスの生徒から敬意と憧憬を受ける半面、憎悪と嫉妬と憤怒そして敵意を受けまくる事になる。
 随分と大変そうなクラスだ。
 よってA組に選抜された生徒は望めばA組以外の所に入れる仕組みも存在する。
 要するにメンタルが弱い、もしくはそんな面倒なクラスには居たくないという生徒は別のクラスに入っているということだな。
 だから一クラス四十人のだからと言ってA組の生徒が成績において絶対に上位一位から四十位というわけではないのだ。
 入りたくない生徒が出ればその分繰り上げされるからな。
 まあ大抵は普通に入るため、別のクラスに行く生徒は一人、多くても二人らしい。一人もいないと言うのが普通らしいが。 
 ちなみに、今その奇特な生徒の括りに入っているのは、俺の親友兼悪友の西屋啓樹その人だ。
 あいつ、頭だけは良かったからな……。
 補足説明をすると、あいつがA組に入らなかったのは
「色々と面倒だから」
「頭がいいだけの頭でっかちが多くて息苦しい」
「上と同様の理由で頭でっかちがボケないから」エトセトラ……。
 それはもうぼろぼろと悪口が大洪水を起こす。よくもまああそこまでボロクソ言えるものだ。
 そして語彙のバリエーションももの凄い。
 バカに始まり、
 勉強ノイローゼ、
 楽しみを知らない地球外生命体、
 脳酷使団、
 勉強という建前で人と関わらないようにする、ある種の引きこもり予備軍、
 つーか普通に引きこもり、エトセトラ……。
 流石に本気で言っているわけではなく、お得意の「嘘を本当に見せかける特殊能力」(必要性と役立ち度は皆無。むしろマイナス)を軽く使ったんだろうが、軽くでも結構信じちゃうものだ。
 単純な脳構造をしていて、こいつのことを良く知らなかったクラスメイトは、この話を聞いた時に、結構信じてしまったらしい。
 しかし、そんな嘘量産兵器が言っていた、完全に信用できる理由が一つ。たった一つだけある。それは、
「お前と離れたくなかったし」……。
 大丈夫、大丈夫。あっち系(ジェスチャーをすると、右手の甲を左頬に当てるジェスチャーになる)じゃないから。
 ものすごく健全な人だから。
 嘘は八百じゃおさまらないって感じだけど、少なくとも精神の構造は一般的だから。
 要するに、ここ二年でできた俺らの絆を崩したくなかったから、ということらしい。
 今となってはもう遅いが、あれだけ罵倒の言葉のボキャブラリーがあるなら、「お前と離れたくなかったし」以外の言葉を選択してほしかった。
 今でこそ解消されたが、当時はリアルBLとして腐女子に追いかけ回されたという率先的に忘れたい、できるなら所持権を放棄して、どこかの誰かに贈与(という名の押し付け)をしたい記憶があるのだ。
 階段を上りきりC組のドアをがらりと開ける。
 ちなみにC組のドアの鍵は少し前に暴れていた生徒が鍵の締まっていたドアにぶつかって外し、強制的にぶっ壊したため今鍵がかかることはない。
 本来は事務の方にでも頼んで直してもらうものなのだろうが、担任があれだ。
 曰く、「わざわざ直してもらうことは無いだろー。ここに貴重品を残して置かなけりゃモーマンダイだから」だそうだ。
 全部が全部間違ったことを言っているわけではないので微妙に誰も突っ込めず、だからと言って代わりにやってやるほど、俺のクラスにお人好しな人間はいない。
 クラス会長もアレだからな。面白そうなことにしか目が無いんだよ。
 つーかぶっちゃけ、全員面倒なんだよ。
 ドアを開くと四十個の席が目に入り、そして自動的に自分の席の周辺に視線が集中する。
 その必然的な行動により、必然的に面白いことにしか興味のない、正直会長失格じゃね? と思う会長の席と、あの表情コンクリ美少女の席が目に入った。
「そういや神之宮ってかなり頭良かったよな……?」
 ふとあの無表情な少女の顔が脳裏に浮かぶ。
 しかし、ほとんど良く見ていなかったため、若干霞がかかったかのようにぼやけてはいるが。
「あいつくらい頭良けりゃA組に入れるような気がするが……」
 実際、西屋も「彼女はかなり頭の良い部類に入るね。僕より若干下くらいかな」と言っていた気がする。
 その時は特に気にしなかったな。ラノベ読んでたし。
「自分から降りたのか? あいつならそんなことしないで普通に過ごしていそうだが」
 そんな事を呟きつつ、入口から自分の席に移動し机の中をあさる。
「あり? 入ってないぞ?」
 俺が使いたい英語の教科書が入っていない。どうしてだ?
「あぁ、ロッカーに入れちまったのか」
 俺はそう言い自分のロッカーに向かう。
 ロッカーの中には一週間洗っていない体操服と、理科の実験に使用する白衣、そして歴史や地理等の教科書が置いてある。
 その教科書が積んであるとこを凝視し英語の教科書を探す。
「っと、これか」
 俺はお目当ての教科書を発見した。二限の代数と三限の現文の教科書の間に挟まっていたからおそらく机の中に一緒くたに入れておいて、挟まっていたのに気付かないでそのまましまってしまったのだろう。
 人差し指で、教科書と教科書の間に挟まっているためなかなか取り出せない英語の教科書に悪戦苦闘していると、

 急に校庭の方から眩い光が窓に差し込んだ。